05
「あぁ、露天風呂付きの客室を空けておいて良かったわぁ!」
「いいのかい、稼ぎ時だろう?」
「良いのよぉ!さあ、案内するわ」
日帰りなのに露天風呂つき客室を空けておくなんて太っ腹過ぎるだろ。
巨体の背中に付いて行くと、一度外へ出て庭園が見える廊下を渡り、離れらしき場所に着いた。
平屋の離れは最も良い客室で、他にある露天風呂付きの客室と違って隣り合わせの部屋がない隔離された所だ。
「お昼ご飯も用意しているから、それまでゆっくりしていきなさいな」
「そこまでしてくれなくてよかったのに、ありがとう清司さん」
「ワタシが勝手にしてることだから構わないわ、久しぶりに沢山話がしたいのよぉ」
「もちろん。楽しみにしているよ」
じゃあごゆっくり、と手を振る清司さんに礼を言って、客室の戸を開ける父さんに続いた。
後で聞いた話だが、清司さんはオネェ系ボディビルダーとして界隈で有名な人らしい。まじか。
「さて、少し休んだら早速みんなでお風呂に入ろうか」
「そうね。やっぱり母国は安心するわ」
テーブルを挟んで両親と向かい合わせに座椅子に腰掛ける。隣で興味深く辺りを見回す瀬戸が可愛くて仕方ない。
お茶を入れる母さんを見つめながら父さんが和やかに言うと、母さんはそれに同意している。
しかしそこでふと違和感を抱いた。
「…みんなで?」
「どうかしたのかい、諒?」
ちょっとおかしな発言があった気がして呟くと、こっちに目を向けた父さんは不思議そうに首をかしげた。
この疑問は言うべきなのか。
勘違いだったら恥ずかしいが、両親の発言は常に直球である。
「露天風呂、もしかして四人で入るの?」
「え、入らないのかい?」
「やっぱり…」
「…は?」
今明らかに瀬戸が動揺したぞ。
どうやら予想は的中したようだ。残念すぎる。
「俺ら高校生なんだけど」
「分かっているよ、なにか問題でもあるかな?」
「あのさ父さん、」
「諒と和史くんが恋人で、私たちは夫婦。愛しい人以外の体に興味はないだろう?もちろん私たちが息子達に興味がないなんて有り得ないけれど、それは存在の話であって身体の話ではないからね。……さて、なにか他に疑問はあるかい?」
「……ありません」
俺は自分の親を見くびっていたらしい。
問題はあるはずなのに、なぜ反論出来ないのかも分からん。
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