[携帯モード] [URL送信]
甘美なる三日間。‐01
 


 父さんと瀬戸が戻ってきてすぐに四人で初詣に出掛け、新鮮な感覚にふわふわとした夢のような錯覚が加わって、妙にむず痒くなった。
 夕食は何にしようかとか、休み中には何をしようかとか話し合うのも楽しい。
 もちろん三人で過ごす正月だって嬉しくて楽しいし充実してきたけれど、そこに恋人が加わって、両親と瀬戸が本当の親子のように戯れる姿を見ると何だか悲しくないのに泣けてくる。
 まだ戸惑いがちな瀬戸だけどそこは両親の力というか、上手い具合に馴染ませていく流れがさすがと言える。


 初詣を終えてスーパーに寄り道しながら、文化祭の時はゆっくり出来なかったからと久々の日本を堪能したいのか、両親が「明日は朝から温泉に行こう」と言い出した。
 流石に急すぎる提案に、持っていた卵パック入りの袋を落としそうになったがなんとか落とさずに済んだ。だがしかし。



「ちょっと待て、なぜそうなる」
「だって、日本っていえば温泉じゃない?」
「露天なら最高だね」



 疑問すらない二人に瀬戸も言葉が出てこないらしく、唖然としている。

 温泉って言っても日帰りだから、と笑う二人。流石に泊まりは滞在日数からしてもゆっくりは出来ないと分かってるみたいだけど、明日の朝からって。

 いやでも、そうやって唐突でも二人の日本滞在は本当に少ない。
 悪ければ年に一度も戻ることが出来ないくらい忙しいのだ。ならばここで拒否する理由はない。



「…わかった。瀬戸は?」
「……、俺は何も問題ねぇから」



 瀬戸の同意を得ると、二人はまるで子供のように笑みを浮かべて喜んだ。
 スーパーからの帰路で手を合わせて喜びあう姿は両親とは思えない華やかさだ。持っている安い袋が似合わない。

 とりあえず明日の予定は決まったけれど、ひとつ気になることがある。



「…てか2日に日帰りとかやってんの?」



 正月の三が日は大抵満室や予約、そもそも店が休みだったりとかで温泉は難しいんじゃないかと思い至ったのだ。了承してから思い出すとか。

 しかし二人は笑顔のまま、大丈夫だとうなずいて、父さんが言った。



「安心していいよ。こっち来る前に、顔馴染みの宿におねがいしておいだから」



 …なにそれ初耳。



 


[*][#]

11/49ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!