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05
 


「───新年早々ごめんなさいね。寒かったでしょう、どうぞ」
「……大丈夫です。ありがとうございます」



 湯飲みを静かに置いた母さんは、いつもと変わらない笑みではあるけれど普段とは違う。あまりに大人しい。

 瀬戸が全身で緊張を現しているのを初めて見たけれど、俺も同じような空気を纏ってるんだろうな。
 テーブルに両親と俺と瀬戸が向かい合わせて座り、湯飲みだけが4つ置かれたそこは的確に表せない空気になっている。


 父さんと母さんは、驚いているでもなく悲しむでもなく怒るでもなく、見慣れた柔らかな表情で俺達を見ていて居た堪れない気持ちが大きい。



「和史くんに会うのは、文化祭以来だね」
「はい」
「私たちは和史くんの事をよく知らないけれど、愛息子は人を見る目があるから悪い子ではないと思っているし、諒の事を好きになってくれるのはとても嬉しいんだ」



 それでね、と父さんは瀬戸と目を合わせたまま、さっきまでの笑みを消して真剣な表情を見せた。
 同時に息を飲んだ俺たちは、ただその先の言葉を待つしか出来ない。
 テーブルに肘をつき、口許を隠すように指を組んだ父さんは、僅かに目を細めた。



「諒のどういうところが好きなのか、いつから好きになったのか、教えてはくれないかい?」
「……は、い?」
「いや恥ずかしがらなくていい。諒の良さは親の私たちがよく知っている、と言いたいところだけれど、離れている時間があまりに長いから、知らないことも多い。ぜひ、聞かせてもらいたい。君から見た諒を」
「え、父さん…?」



 あまりの眼差しの強さに圧され、なにを言われるかと身構えていた所に放たれたのは、ちょっとよく分からない言葉だった。
 父さんは真面目な顔のままで、ちなみに母さんも似たような表情をしている。

 え、何これ。
 戸惑いに瀬戸を見やると、瀬戸はまっすぐ父さんと目を合わせたまま、数回瞬きをしてから視線をさ迷わせていた。
 思いっきり困ってんじゃねえか。

 が、俺は妙な圧力にそこへ入り込めず黙り込んだまま、父さんと瀬戸の様子を見つめるしか出来ない。
 少しの沈黙のあと、瀬戸が口を開いた。



「───初めて会ったのは、4月のはじめくらいです」



 今まで幾度となく思い出してきた最悪の出会いが、また脳裏によぎった。
 ───そこから、正直俺が恥ずかしすぎて逃げ出したいくらいの発言が瀬戸の口から放たれていくのである。


 

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あきゅろす。
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