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04
 


「諒ちゃん、付き合ってるって、恋人になったの?」
「……うん」
「どっちから告白したんだい?」
「……瀬戸」
「そうなの…、嬉しかった?」
「……っうん」
「諒は、和史くんの事好きかい」
「好き」
「諒ちゃん。和史くん、予定が無ければ今から来られないかしら」
「……っ」



 穏やかな問いに答えながら、どんどん気持ちが落ち込んでいく。
 母さんに瀬戸を呼んでほしいと言われた瞬間には、鳩尾が締め付けられるような感覚に陥った。
 食事は殆ど終わっているけれど、言うべきではなかった。勢いに飲まれた。
 やっと会えてこれから楽しい三日間になる予定だったのに、俺のせいで台無しになってしまうかもしれない。

 二人は、何故、とは問わなかった。
 なぜ瀬戸と───男と付き合うことになったのかとは聞かず、ただ質問してきただけ。それが余計に不安を煽る。


 ソファに置きっぱなしだった携帯を取って瀬戸に電話を掛ける。
 背後では食器を片付ける音はしているが会話は聞こえない。両親がいてこんな静かなのは初めてだ。


 ぶつり、と呼び出し音が切れる。



『……もしもし』
「わるい、寝てた?」
『あー…、帰ってから眠れなかったから』
「…そっか」



 気だるげな低い声が耳に馴染んで自然と頬が緩むけれど、状況を思い出して息を飲む。



『…どうした』
「あのさ、」



 雰囲気を感じ取ったのか、真剣な声色が聞こえる。
 言わないと。これから先の、大事なことが早まっただけ。それだけだ。



「突然で悪いんだけど、今からこっち、来られないかな」
『いま?…いいのかよ、親いるんだろ』
「その……、付き合うことになったって言ったら、両親が呼んでって」
『…!』



 微かに聞こえた息が詰まったような呼吸に、苦しさが増していく。
 少し沈黙したが、なるべく早く行く、と低く言った瀬戸は小さく謝ってから返事も聞かずに通話を切ってしまった。
 言い逃げかよと思わなくもないが、謝られてしまうと余計に寂しい。


 振り返ると両親はテーブルに座ってこっちを見ていて、「なるべく早く来るって」と伝えると笑顔で頷いた。
 だけど、どうしよう。
 沈黙がとんでもなく恐い。

 瀬戸が来るまでの30分は、まるで何時間も経っているくらいに長く感じた。



 


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