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03
 


「この三日間のうちに一度くらい会いたいのだけど、忙しいかしら?」
「んや、集まりもないし暇って言ってた」
「親戚の所やご実家へは行かないのかい?」
「…あんまり関わってないって聞いた」



 瀬戸の周りに関しては殆ど知らない。
 聞いてないのもあるけれど、あまり良い話しにはならなそうだと思うのだ。以前本人が、家族仲が良くないという話をちらとした為に、それから聞く気も起きてない。

 少し寂しそうな顔をする両親に苦笑する。

 俺と瀬戸の家庭環境は殆ど正反対な気がする。
 引くくらいの仲良しだと言われたことのある俺の家庭は、珍しいくらいだろう。
 扱いが酷いとか愛されていないとか、そういう深いところまでは知らないからとやかく言えないけれど。

 いま何してんのかな、と不意に浮かんでから、頭の中が瀬戸の存在で埋まっていく。
 窒息しそう、と思っていると、母さんは何か名案が浮かんだと言わんばかりに「そうよ!」と突然笑った。



「明日と明後日は和史くんも一緒に正月過ごしましょう!」
「ぶふ…っ」
「それはいい案だ。さすが私の愛妻」
「でしょ?ね、諒ちゃん!」
「ちょ、…っちょい待ち!え、何いってんの!?」



 ね、じゃねーよ!
 可愛い笑顔向けたって納得しねぇから!

 あまりの唐突な提案に白米は飛んだし、俺の突っ込みに二人は不服そうだし、いくら気に入っているとは言っても瀬戸は二人と初対面以来会ってないんだから気まずいに違いない。
 よく考えようぜ、と両親を説得しようとするも、既に二人は四人でどこに行って何をしようかとまるで旅行気分である。

 やばいこのままでは瀬戸が二人の餌食に…!

 正直俺も瀬戸と一緒に居たいと思ってるし、こ、恋人になったわけだし、……あ。



「……あのさ、このタイミングで悪いんだけど」



 持っていた箸を置いて姿勢を正すと、二人は少し驚いたように瞬きをした。



「どうしたんだい?深刻そうに」
「和史くんと喧嘩しちゃってるの?」
「いや違うけど。喧嘩してない。……えと、俺さ…瀬戸と、あの…つ、付き合うことに、なった」



 言い切るまで二人の目を見続けられず、付き合うことになったという言葉は俯きながらになってしまう。
 しん、と静まり返った室内に、さすがにこれはヤバかったなと後悔が滲み出てきた時だった。


 


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