02
滅多に会わない両親だが、俺が記憶している限りで料理の腕はかなり上等である。それにしょっちゅう海外を飛び回る彼らの舌は様々な国の料理を知っていて、好奇心旺盛な母さんは必ず自分で作ってみたりしたはず。
昼御飯になにが出るのか楽しみだな、と期待しつつも出来上がりの声に観ていたテレビを消して食卓へ移動した時、俺は呆気に取られた。
そこにあったのは最近ではあまり見ないくらいの古き良き日本食、つまり和食だったからである。
湯気が立ち上るほかほかの白米に、わかめや豆腐とネギなどが浮かぶ味噌汁、玉子焼き、漬け物、お浸し、鮭の塩焼き。
食器まで和風で決めたその品々に、思わず両親を見てしまった。
彼らは優しい笑みを浮かべている。
「朝食みたいだけど、すまないね」
「海外の料理ばかりでつい日本食が恋しくなっちゃったの。正月だからおせちもいいかなぁって思ったんだけどね」
「…そうだよな。俺も最近ここまで完全な和食ってないや」
日本人だからねえ、と笑う両親は、丁寧にも飲み物まで暖かい日本茶を湯飲みに入れている。
和食に飢えてたんだな。
「諒ちゃんは今年も多貴ちゃんと伊織ちゃんと初詣に?」
和食を噛み締める父さんの隣で、小首を傾げながら母さんが言った。
毎年欠かさず深夜に初詣へ行っているのを知っているから、こうして毎年聞かれるのもひとつの習慣である。
頷いて肯定してから、今年は少し違っていたことを思い出す。
「今年は瀬戸が一緒に行っ」
「あら和史くんが?」
「それは素晴らしいね」
最後まで言わせろや。
柔和な笑みの父さんと目を輝かせた母さんは、文化祭で一度会ったきりの瀬戸をもう気に入っているらしく、あれから度々夏樹さん経由で何故か俺と瀬戸のツーショットをねだってくるようになった。
写真を滅多に撮らないから、戯れに交えて瀬戸と伊織と多貴に幸丸と桜井ちゃんとトリプルデートした際に記念に撮った写真を送ったら夏樹さん経由で歓喜していたという報告がある。
直接電話をしたら会いたくて仕方なくなるからと大抵夏樹さん経由になるのも、もう慣れたものだ。
瀬戸のなにが二人に気に入られたのかは謎だが、俺も他人事ではない。むしろ瀬戸のことに関しては血筋を感じたくらいである。
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