06
「───で、ようやく納まったわけねー」
「ようやくって」
手短についさっき付き合うことになったと伝えたら、多貴と伊織は安心したように笑った。
今になってじわじわ来る。恥ずかしくて瀬戸の方を向けない。
「いつ自覚していつ気づくのかなって思ってたんだよ」
穏やかな声で伊織に言われ首をかしげる。
自覚はまだしも気づくってなんだろ。
「自分の気持ちに疎いし、向けられる恋愛感情に限っても疎いから段々瀬戸くんが可哀想になってきちゃって」
「しかも諒ちん、自覚してからも霧島の事で引っ掛かってたんじゃねーかなってさあ」
「ぶふっ」
あまりのピンポイント指摘に、飲んでいたお茶を噴き出した。
いくら長い付き合いとはいえ、ここまで読まれていると恐ろしくなる。いや、俺が分かりやすいのか?
貰ったティッシュで口を拭いていると、伊織に優しく頭を撫でられる。
「でも、良かったよ」
「……ん、」
「新年早々めでたいねぇ、良かったね瀬戸ちん」
「やめろ肩組むな」
まだほんのり顔が熱くて、多貴と戯れている瀬戸を見やると、視線に気付いたのか目があって、しかも瀬戸も若干顔が赤かった。
途端にむず痒くなって目をそらす。
「中学生の初恋みたい」
「伊織……」
そんな感心したように言わないでください。
しかし伊織は、目を細めて笑い「本当に良かった」と頷いて、その言葉と表情に胸がいっぱいになる。
堪えきれずに笑うと、多貴が「はにかみ諒ちん可愛い」とふざけたことを言ったが、色々面倒や心配をかけまくってしまった為に何も言えなくなる。
「ありがとな、二人とも」
「いいってことよー」
「二人の幸せそうな顔が見られたからね」
どんなことがあっても側で見守ってくれる二人が好きだ。
それからしばらく熱冷ましに雑談して、賑わう通りに出て本来の予定である初詣に出向くことにした。
深夜でも人が多いけれど、昼間よりマシなのでお参りまで待たずに済んだ。
賽銭を入れ、礼に柏手と流れに目を閉じて、まず初めに瀬戸と出会いこうして恋人になれたことに感謝する。
いろんな人に出会えた前の年、いろんな事があったけれど、今の幸せの必然ならば、それはとてもありがたいことだ。
また今年も見守っていてください。
今年も来年もまた次も、こうして隣に居られるように。
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