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トリプルデートをしよう、の前に。‐01
 


 クリスマスイブは例年通り、この時期限定の大好きなスイーツを専門店を巡って仕入れて好きなだけ楽しもうと朝からルンルンして着替えていると、携帯が着信を知らせた。



「ふぁい」
『……寝起きか?』
「いや着替えてた」



 冬休みだから寝てるのかと思っていた瀬戸からの電話で、セーターから顔を出して携帯を持ち変える。
 早起きだなとお互いに言い合って、どうしたのか聞くと暇だから電話したらしく、無意識に頬が緩んでいく。



「じゃあ、スイーツ仕入れるの一緒に行くか?」
『仕入れ?』
「毎年クリスマスは好きなだけスイーツ食べるんだけど、今年はクリスマス出掛けるから今日やろうかなと」
『よく食うな、昨日あれだけ食っといて』
「好きなんだよ悪いか」
『悪くねえよ。そっち行く』
「おー、わかった」



 電話を切って着替えを終わらせ、スイーツ買ったらすぐ帰るから髪はサイドをピンで止めただけにしておく。
 財布と鍵と携帯と───必要最低限ポケットに押し込み、ジャンパーを手にキッチンでお茶を飲んでいると、チャイムが鳴ったので上着を着てブーツを履いて家から出る。



「おはよー」
「おう」



 壁に寄りかかっていた瀬戸が軽く手を上げる。
 シンプルにモノクロな私服なくせに似合いすぎてカッコいい。ムカつく。
 歩きながら駅ビルのデパ地下にある専門店街に行くと言うと、瀬戸は「うるさそう」と苦笑いをしたものの嫌そうではない。

 なんかトゲが無くなったなあ、と横を歩く瀬戸を見上げると、目があった瀬戸にデコピンされた。理不尽。



「なにすんだこのやろう」
「なんとなく」



 えー、なにそれ。
 不貞腐れて眉を寄せると、くつくつと喉で笑うその姿にドキリとしてしまった。
 前を向いて額に触れる。


 なんか、デートしてるみたいだ。


 ぱっと浮かんだ言葉に急に羞恥心が沸き上がって顔が熱くなる。
 首の後ろを撫でながらも隣の気配に意識が持っていかれて、やばいなぁ、と自分の気持ちに呆れが出てきた。
 好きだと言う気持ちは、気付くとどんどん増していって、それでもこの心地よさを壊したくないからと動けないなんて。
 会長にヘタレとか言えねーわ。


 しばらく歩いて駅ビルの中に入ると、クリスマス商戦で賑わいを誘うデパ地下は人で溢れていた。


 


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