甘味で始まる冬季休業‐01
冬休み前日。
暖房が効いた暖かい講堂に全校生徒が集まって終業式が行われている。
相変わらずな理事長のふざけた言葉と副校長の突っ込みを聞きながら、ぼんやりと目の前の黒い短髪を見る。
右側に幼馴染みカップルが座り、前には瀬戸と幸丸、少し離れた場所に桜井ちゃんが座っていて、背もたれというか後ろの机に寄りかかっている瀬戸の後頭部が近い。
頬杖をついたまま、その近い髪をひと束摘まんでみた。
瞬間に軽く振り返った瀬戸は少しの間何か聞きたそうに目を見てきたが、なにも言わない俺に諦めたのかまた前を向いた。
しばらく手触りのいい髪を触り、なんとなくうなじに指を滑らせた。びくりと目の前の肩が反応して、ちょっとした悪戯心が刺激される。
余計な肉がない引き締まった首筋に人差し指を滑らせ、シンプルなリングピアスのついた耳に触れる。
リングピアスもいいな、と思いながら形の良い耳をなぞる。
瀬戸には少しゴツい系も似合いそうだな、でも赤い一粒石もいいな、とか浮かんでは、そのまま耳の側面を撫でていると突然瀬戸に手を掴まれた。
理事長の話はまだ続いている。
振り返りはしなかったが、手を離す気はないらしく瀬戸の肩の上で指が俺の掌を撫でる慣れた感覚がした。
瀬戸はよく掌を指で撫でる。
なにが面白いのか分からないけど、ただそれが最近では心地よくなってきてるからされるがまま。
体温高いなあ、なんて握られる手の温もりにふわふわする。
いじられている事に飽きてきて掌を撫でる親指を同じ親指で撫でると、ぐっと窪みを押される。
骨が浮き出た手の甲に指を滑らせて、そのぼこぼこした感覚に少しハマる。
しばらくそれを続けていると、理事長の話が終わって副校長による冬休み中の注意などの話が始まって、ふと顔を上げたら妙に視線を感じた。
左側を見ると、なぜか顔を赤らめた男女数名がハッとしたように目をそらした。
どうしたんだ、と首をかしげながら幼馴染みの方を向いたら、前を向いたまま互いの片手をいじり合う多貴と伊織がいた。
ああ、こいつら見てたのかとさっきの赤面男女に納得した時、多貴がこっちを向いて言った。
「諒ちん、オレらのこれ見てどう思った?」
「え、仲良いな」
「いや言い方間違えたわ。客観的に見て」
「いちゃいちゃしてる」
「だよねー。じゃあ同じことしてる諒ちんたちもそう見られてるからな」
「え?」
まったくなにも考えてなかった。
そう言ったら、多貴と伊織が同時に溜め息を吐いた。
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