02
今夜は俺の実家で多貴のお祝いだけど時間に余裕もあるから、各自私服に着替えて俺の実家に集合することになった。
HRが終わった後で夏樹さんからメールが入っていて、先に準備進めてるという内容だった。
買い出しは必要ないらしい。午前中に仕事終わらせたなあの人。優先順位がちょっとズレているけど、嬉しいのであえて突っ込まない。
幸丸と桜井ちゃん、瀬戸の三人とは校門前で一度別れ、三人で帰路を歩いた。
「───じゃあ、また後でね」
「後でなー」
「おーう」
分かれ道で二人に手を降り、軽く走るように家に帰ると、リビングからガチャガチャと音がする。
「ただいま」
「おかえりー」
キッチンを覗くと、長い髪をまとめて相変わらずスタイルの良さと姿勢のよさで手を動かす従姉がいた。
とりあえず着替えてこようと二階に上がる。
着替えている途中で瀬戸からメールが来て、一番近いはずの幼馴染みより早く、既にこっちに向かっているという内容だった。
「あいつん家学校から近いんかな」
そういえば、瀬戸の家って行ったことないな。
独り暮らしなのは聞いたけど、行きたいとか思わなかったし、なんか気になる。今度聞いてみようかなと思いながら、細身のジーンズを履いて黒いタンクトップとオフホワイトのVネックのセーターを被る。
暖房入ってるし、厚着する必要はない。どうせ途中で暑くなるんだし。
一階に降りてキッチンに入ると、夏樹さんが振り返って俺の全身を見てから真顔で「女の子みたい」と言いやがったので「あんたが買ったやつだろ」と返したら、ああ、と思い出したようで小さく頷いた。
「なに作ってんの?」
オーブンを覗き込んでいる夏樹さんに問い掛けながら手を洗う。
「今やってんのはキッシュで、あとそれグラタンの仕込みと、あと…なんだっけ」
振り返らずに言われたので、なんだそりゃと思いながら周りを見渡す。
使いかけの冬野菜や何種類かの肉が置いてあって、オーブンにはキッシュ、グラタンは分け合うのか大きい耐熱容器が近くにある。
なに手伝うかな、と考えていたら炊飯器が鳴ったので開けてみたら、なぜか肉の塊が入っていた。
「え、なにこれ」
「あぁそれローストビーフ」
え、ローストビーフ作ったのこの人。
ついついその細い背中を見ていると、振り返った夏樹さんが少し苦笑いして「ストレス発散中」と言った。
そりゃまあ、仕方ないね。
[*][#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!