無意識な攻撃。‐01
冬休み前の昼休み明けの授業は一教科だけで、あとはHRで終わる。
気だるそうなまっつんが期末試験で一位になった多貴に、いつ買いに行ったのかコンビニのグミが入ったスティック形包装のソフトキャンディを手渡していて、それなりに祝う気があったことに驚いた。
ソフトキャンディとまっつんを交互に見て、多貴は「まっつんがデレた」と呟いてまっつんに軽い拳骨を食らう。
それを微笑みながら見ていた伊織は、その笑みのまままっつんに言った。
「僕が一位の時は何もくれなかったのにね」
笑う伊織に、まっつんは溜め息を吐く。
「お前いつも一位だろうが。俺の金が無くなる」
「お菓子で?」
「塵も積もれば山となるんだよ。記号間違えたお前が珍しくて採点しながら二回くらい見直したけどな」
「そのまま見逃してくれたら良かったのに」
「望月対策ナメんな」
「僕への対策だったんだ、初耳」
「対象教科の教師共はみんなそうだけどな、お前に合わせて問題作ると平均点がかなり下がるんだよ。だから俺だけ」
伊織に合わせて試験問題作ったら、内容は大学レベルに上がるだろうし、そりゃあ平均点下がるわ。
それを予想したまっつんは流石二年目の担任である。
一年生の終わりに、伊織の学力の限界を見ようとまっつんが個人的に放課後俺と多貴と伊織にテストをした事がある。
俺と多貴は自らの限界を知りたくて進んでそれを受けたけど。
教科はもちろん数学だが、内容は最難関大学の入学試験レベルで、多貴と俺はなんとか半分解けたものの合格点には届かず、しかし伊織は満点はいかなかったが入試合格点を余裕で叩き出した。
それからまっつんは伊織対策にクソ難しい問題を二、三試験内容にぶちこんでいるらしい。あとは今回あったようにまっつんが用意した解答が正解とか。鬼畜だ。
「まあ、お陰で俺が担任するこのクラスの数学平均点は結構上がったけどな」
伊織対策の問題でクラスの平均点上がるとかナニソレすげえ。
「僕のお陰だね、先生」
「あー…」
ガリガリと後頭部を掻きながら唸ったまっつんは、伊織から目をそらした。
だからまっつんは伊織に頼ってんだなあ、とぼんやり考える。小さな相談事なら生徒である伊織に持ち掛けるくらいだし、面白い上下関係だ。
「とりあえず、HR終わらせてください」
「おー」
伊織に促されて教卓に戻ったまっつんは、手短に用件を伝えて解散の号令を出した。
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