05
「諒は休み中予定出来た?」
二つ目の惣菜パン(たまたま弁当を作れなかったらしい)を開けた蒼司は、違和感ない仕草で首をかしげた。
一応クリスマスの予定は出来たけど冬休み中は特にないので、毎年の如く年末正月休みに入る夏樹さんの相手やら時々幼馴染みたちと遊んだりするんじゃねーかなあ、と返したら「たまには遊んでね」と切実そうな目で言われる。
まあずっと会長に独占されるより違うヤツと息抜きしたいよな。
なんて思っていたら、ずっと黙っていた瀬戸が不機嫌そうに言った。
「テメーはあのヘタレと遊んでろ」
「あいつみたいに心が狭いと嫌われるよ」
「アレと一緒にすんな」
「変わらないでしょ、嫉妬深くて独占欲強くて自分勝手」
「あそこまで酷くねぇよ」
「あそこまで酷かったら容赦なく潰すよ」
「ハッ、出来もしねぇくせに」
「どうかな、腕っ節の強さが全てじゃないんだよ」
時間が許す限りでずっと言い合っていそうな二人を横目に、何だかんだよく喋るよなこいつら、と雰囲気の険悪さはさておき悪いものではない気もする。
会長と瀬戸に対して蒼司の黒さが顕著に出てくるんだよなあ。楽しそうだし。
そんな睨み合いを生温い目で見ている他の四人に気付かずに、二人は飽きもせずに喋り続けている。
子供の口喧嘩見てる目だなあれは。
結局昼休みはタレ目と不良擬きの言い合いで終わり、チャイムが鳴る頃にはほぼ蒼司の会長に対する愚痴が占めていた。
それを遠い目になりながらも聞いている辺り、瀬戸は最近会っている会長に対しても蒼司に対しても寛容になってる。
てかどんだけイメージ悪くしてんだあの人。
とりあえずマイナスからゼロにするところから始めないとダメじゃねえかなあ、と最近よく相談してくる会長にまた呆れた。
「やっぱりさっきのアレは一人を取り合ってるんだよねそうだよね、あわよくば横からかっ拐う算段をあの柔らかな表情の下に隠してるんでしょ腹黒万歳」
「違うし声デカイっす」
教室に戻りながら後ろで戯れている幸丸と桜井ちゃんはもはや安定である。むしろさっきまで大人しくしていたのが違和感とか、感化されてんのかなあ。
嬉しい賑やかさに自然と頬が緩んだ。
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