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04
 


 冬休み前とあって授業の内容は新しい範囲ではなく復習が主で、時折小テストなんかもぶち込まれたりとしたものの比較的のんびりと終わった午前。
 昼休みに入るチャイムと同時に食堂派と弁当、購買派で別れて、俺たちは久々に屋上で昼御飯にしようと揃って弁当を持って他愛なくじゃれながら向かった。

 最初は三人だったのに、気づけば今や七人に増えた。
 会長に引っ張り回されなくなった蒼司の顔色と機嫌は見慣れた柔らかさに戻っていて、どんだけ会長にストレス感じてんだと改めて思った。


 なんとなく座った位置が緩く円形になるように落ち着いて、冬晴れで日差しが暖かく風があまりない日和に、こんな日が続けば良いなぁと思いつつも弁当を前に手を合わせてから、いただきます。



「そーいや蒼司、冬休みってやっぱ会長に予定埋められたの」
「心底残念だけどね」



 クリスマスがどうたらと会長が言っていたのを突然思い出して、クリスマスだけなのかなと疑問が浮かんで問いかけたら、本当に残念そうに返された。
 会長哀れ過ぎる、と少し同情してしまったけれども自業自得だから仕方ない。

 あー…、と幼馴染みカップル二組が納得したように声を出して、隣の瀬戸も何やら思い出したのか遠い目をしてるのを横目に、卵焼きを摘まむ。



「どっか行くのか?」
「さあ、知らない。ただ休み中の時間くれって言われただけ」
「今までの仕返しに行きたいとこ連れ回せばいいんじゃね」
「俺が行きたいところにアイツと行きたいと思えない」



 卵焼きを咀嚼しながら蒼司の表情を観察すると、心底あり得ないと言わんばかりの苦々しい顔で、その新鮮さに言葉の辛辣さの違和感がなかった。

 会長のことになると不機嫌そうというか新しい表情がよく見られて、なんだか面白いとか思ってしまって蒼司に申し訳なくなるが、だって本当に今まで見たことないような表情するから。



「てか行きたいところあんの」
「えー…。癒される所に行きたい」
「切実だな」



 癒される所って、蒼司が好きな可愛いものがある場所になるわけで。
 自然、生物関連に的が絞られる。



「動物園とか?」
「悪くないなあ。そこは会計と行きたいと思ってる」
「会計で癒されてるんだな」
「まあね、愛でる分にはそれで我慢出来る」
「使われてんな」
「寄ってくるからついでに」



 なんだか蒼司が腹黒くなってきてるような気がした。


 


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