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03
 


「え、お前それでいいの。クリスマスそれでいいのか」
「いや別にその日予定ねぇし」



 頬杖をついてさらりと言われた。
 瀬戸の事だから色んな女の人から誘いがあると思ってた。こいつモテるし。
 不良やってれば自ずと周りに集まるだろうし、噂の一人歩きかもしれないけど強ち間違いでもないはず。



「色んな女の人から言い寄られてんのかと」
「……まあ、去年まではな」
「去年まで?」
「俺が居ちゃ悪いか」
「いやまったく。むしろ楽しみだけど、本当に良いのかと」
「……、…うっせぇな良いんだよ」



 ぐ、と眉を寄せた顔は相変わらず強面ではあるものの、若干拗ねたような雰囲気に自然と頬が緩んだ。
 そっかー、とにこにこしながら伸びてきた黒髪をかき混ぜるように撫でたら心底驚いたように瀬戸の目が見開かれ、「なんだよ」とは言われたが振り払われることはない。
 なにこいつ可愛い。


 ワックスとか付けてねえんだな、とサラサラな髪を撫でるように梳くと、眉間にシワを寄せたまま瀬戸が俺の髪を乱暴な手付きでかき混ぜてきた。



「ぎゃ!ちょ、俺ワックス付けてんだけどやめろ!」
「うっせえ知るか。テメェだってやっただろうが」
「お前何にも付けてねぇから困らないだろ」
「だからやってんだよざまあみろ」
「このやろ…っ」
「直してやっから」
「じゃあやるなよ!」



 ムカつくこいつさっき可愛かったのに、と拗ねてると、瀬戸が苦笑いしながらかき混ぜた髪を頬杖して片手のまま直すような動きに変えた。
 くそー、これで変になったらどついてやる。






「───…諒ちんがああいうスキンシップに違和感ないのはオレらのせいだよな」
「否定はしない。懐に入れた相手との距離感がかなり近くなるのは僕らのせいだね。自覚ないだろうし」
「ああ…、だから諒ちん気付かないのか…」
「だろうね。微笑ましいけど、最近瀬戸くんが哀れに見える」
「否めない」
「まあ、悪い感じではないから邪魔はしないけど、これで諒がずっとこのままだったら瀬戸くん泣くんじゃないかな」
「色んな意味で泣くだろうな」



 なんて会話を無表情で交わしている幼馴染みに気付かずに、俺の意識と視界には瀬戸しか居なかった。



「ああ、無自覚バカップル見られたお腹いっぱいご馳走さまです」
「お前ほんとブレないっすね」



 


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