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03
 


 そーいや、蒼司って可愛いものに弱いんだよなあ。
 瀬戸の水族館発言でまた考え込んだ会長を眺めながら、ふと思い出す。
 見た目が可愛い会計には弱いし、動物好きだし、水族館だって可愛い生き物は沢山いる。



「もうさあ、可愛いモンあるところ調べたら良いんじゃね」
「可愛い…?」



 膝に頬杖ついてなんとなしに言うと、会長と目が合う。



「あいつ可愛いのに弱いじゃん」
「……そうなのか」



 え、知らなかったの。
 知っている前提で言ったからか、会長の言葉に呆気。
 生徒会室に連れ込んでて会計には弱いとか気付かなかったのかこの人。食堂とかで見掛けると毎度会計の押しに負けてんだぞ。そのくせあいつ会計がメシ食ってるの見て癒されてんぞ明らかに。


 あれだ。
 くっつくかどうか以前に会長は蒼司の好き嫌いを知らなすぎる。本質とか性格とかの話じゃない。
 好き嫌いは会話してりゃ案外容易く手に入るレベルの簡単な情報だ。

 そこからかよ、と何だかもう哀れになってきた。



「……いく場所考えるよりまず情報収集だな」
「本人に聞きゃ良いだろ」



 ため息を吐いたら瀬戸が呆れながら言った。
 まあそうなんだけど。



「そうなんだけどさあ、会長が変に拗らせるから本人に聞きづらいんだろ」
「……お前もう諦めろよ」
「うるさいそんな目で見るな」



 一応先輩で生徒会長なんだけど、あまりの現状に瀬戸は可哀想なものを見る目で会長を眺めてる。
 諦められないからこうして不器用に頑張ってんだから、ちょっとは応援してやれよ瀬戸。
 ぶっちゃけ俺はお前の事が可愛く見えるくらい好きなんだけどな、今は会長のことで哀れ過ぎてさあ……、なんて言うわけもなく。



「細かい事は追々会長が自分で知っていくにしろ、いく先が蒼司の苦手な所だとまた拗れるから面倒だし、然り気無く聞いてみるからそれまで調べものついでに待っててくんない?」



 昼休みがもうすぐ終わりそうだったから、矢継ぎ早に伝えると、会長は渋々頷いた。



「悪いな。諒、今度なにか奢る」
「結果が良くなるならそれに越したことはねぇけど、滅多に食べられないスイーツ系だったらよろこんで」



 あ、やっぱ名前呼び定着してんだな。
 お隣の瀬戸さんが何やら急にご機嫌ナナメになりましたけど何でかね、俺だけに奢るみたいな言い方したからかね。




 


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あきゅろす。
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