02
「蒼司が許したんだ」
「……まあ」
会長も予想外だったのか、未だに信じられないみたいな顔で頷いた。
でもまあ、良かった良かった。
不器用なりに会長も蒼司にちゃんと歩み寄ろうとしてんだな。
そんで会長の本題、クリスマスにどこに行くかである。
「あいつ、どんなとこが好きなんだ」
「んー、あー、どこだろ」
中学の時は金も無かったし贅沢なんか興味ないから、安いケーキ買って俺の部屋でのんびりしたりゲームしたり内容的には普段と特に差はなかったけど。
ぶっちゃけアイツは俺と一緒に居られるならどこでも良いって言ってたし、ゲーセンだろうが河川敷の散歩だろうが何でも嬉しそうだった。
高校生になって、遊ぶ範囲も広がって、ついでに言えば会長ならどこだって連れて行ける気がする。
生々しく小汚ない話、金持ちだしな会長。
どうせ会長は蒼司に財布開かせる気ないだろうし、そうなりゃ蒼司が会長持ちでも仕方ないような所が無難。確実に文句は言うだろうけど。
「クリスマスなんて有名どころは恋人たちがわんさか居るもんな」
「あいつあんまり人込み好きじゃねぇって言ってた」
「喧しいより静かで落ち着ける所がいいんだろうけどさあ、」
なんてったってこいつら美形だし、どこいっても人の視線は避けられない。
人目がないなんて所ないし、あるとすりゃあ究極室内。どっちかの家かそういう個室あたり。
豪華すぎてもダメ。
質素でもまあアイツはそこに文句を言ったりはしないだろうが、会長が納得しなさそう。
「水族館でも行ってろ」
「お前の口から水族館とかびっくり」
「うっせえ」
いままで黙ってた瀬戸がいきなり水族館とか言い出して、会長と二人で瀬戸を見たら呆れてた。そりゃそうか。
だが会長からの返答がない。
会長に目を向けたら、真面目な顔でコーヒーを飲んでいた。
「……なるほど」
えー、うそー、まじか。
瀬戸の意見を素直に聞き入れた会長に、言った本人も「マジかよ」という顔である。
薄暗くて人目もあまり気にならない、他より騒がしくなくて、わりと落ち着ける。
男二人でクリスマスに水族館って所には突っ込まなくて良いのかな、と思いながら会長の動向を見守った。
「……参考にする」
なんと瀬戸の意見採用である。参考だけどたぶん採用だろう。
瀬戸は瀬戸でそれ以上何も言う気がないらしく、呆れた顔のまま会長から目をそらしてお茶を飲んでいた。
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