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02
 


 間違えても飲み込みの早い桜井ちゃんは、やっぱり元々頭は良いのだろう同じ間違えはしなかった。一度ぶった切られたからかそれ以降桜井ちゃんは時折低く唸ってもマシンガントークは放たれず。

 一時間くらい経った所で、お茶飲もうと部屋を出て人数分のコップをお盆に乗せていると、何故か瀬戸が降りてきた。



「どした?」
「手伝う」
「お、サンキュー」



 なんの意識もなくぱっと顔を上げた瞬間、滅多に見ない眼鏡姿を改めて間近で見てしまい一瞬手が止まる。

 ……う、わあ。

 普段の強面がノンフレームの眼鏡で若干和らぎ、黒髪にモノトーンの私服が相まって、普段見慣れた制服ではないその姿に心中が突然荒れた。

 やばい。凝視する。


 見上げたまま固まった俺に訝しげに首をかしげた瀬戸に、またドキリとした。



「俺の顔になんか付いてんのか?」
「っ、いや、……相変わらずのイケメン具合だなと思っただけ」
「……なんだそりゃ」



 なんとか誤魔化し…切れてない気がするが、いつも通りになっているようななってないような。
 笑いながら盆を差し出して水だしのお茶を持って振り返ると、瀬戸が背を向けようと踵を返した時で、その横顔に目を見開いた。



「……何で顔赤いんだ」
「うっせえ」



 いや何それ理不尽。
 なんだよー、と言いながら背中をつついてやる。



「やめろバカ」
「なんだと。顔赤いくせに」
「関係ねえだろ。赤ペンの見すぎじゃね」
「見てねーよ」
「2章の問6間違えてたぞ」
「うわ、カンニングだカンニング」
「してねえよ」
「照れ屋め」
「聞こえねえな」



 階段を上りながらの会話が何だか可笑しくて、ドキドキする気持ちと楽しさに、好きだなあ、なんて後ろ姿を見ながらまた思う。
 これがずっと続けばいいな、と。

 ───思いながらも自室の扉を開けたら、そこはカオスでした。



『───そしてなぜ俺にその花畑への切符を差し出してくれなかったのか!』
「めんごー、忘れてたてへぺろ」
『くっそ!くっそ!先輩の勉強の教え方めちゃくちゃわかりやすいのに内容が飛ぶくらいの衝撃だ!嫌がらせだ!』
「いーじゃん、イチャイチャしてなよ」
『言うなよそういうことを!───っほらぁ!先輩が妖しい笑顔じゃん!ちょ、ま、先輩、早まったらいけませんぞ今の状況を思い出してえええ!』
「まさにオイシイ立場ね」
『うっせこらそこ代われえええ!』
「絶・対・イ・ヤ」
『おまっ絶対笑ってんだろおおお』



 え、なにこれ。


 

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