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明かした本音。‐01
 


 なんやかんやと数日後、昼休みに入り、さぁご飯だと弁当をふたつ取り出した所で、ブレザーのポケットに入れていた携帯が震えだした。
 長い震えに電話だと気付いて携帯を見ると、登録されていない電話番号。
 誰だろ、と思いつつも応答して耳にあてたら。



『仁科諒、今から生徒会室に来い』
「───…は?」



 その低い声と前振りのない内容に、出たのは素の疑問だった。
 え、いや、誰だよ。なんて思ったものの、俺をフルネーム呼び+生徒会室に来いという命令形+聞き覚えのある声を順に理解していって弾き出された人物に、眉間にシワを作る。
 同時に、つい最近タレ目から聞いた話を思い出した。というわけで。



「無理」
『…拒否権はない』
「用があるならアンタが来い」



 そう言って問答無用で通話を切った。
 さてと顔を上げると、無言の視線が六人分。
 幼馴染みカップルに瀬戸、幸丸、桜井ちゃん、そして最近一緒に昼食を食べる事が増えた蒼司。



「知らない番号から電話きて、突然生徒会室に来いとか言われた。名乗らないから不審者だと思って切った。以上」



 瀬戸に弁当を渡し、無言の問い掛けに溜め息混じりに答えると、真っ先に桜井ちゃんが吹き出し幸丸が呆れ、瀬戸が不機嫌になり、幼馴染みは「へえ」と同時に返事をした。
 みんな気づいてるんだろうな。わかってる故の興味なしなんだろうな、と相変わらずな容赦なし具合にちょっと苦笑い。

 その中でひとりだけ違う反応をしたのは蒼司だった。



「なんで諒の番号……、あ、」



 何を思い出したのか、みるみるうちに不機嫌な顔になっていく蒼司に、俺はただ感情が豊かになったなとまるで親類のような心境になっただけでした。
 気になったらしい幸丸が、どうしたのか聞くと、蒼司は不機嫌をそのままに、



「……前に、勝手に携帯を奪われたことがあって、たぶんその時に盗ったんだあの野郎」



 普段の柔らかさからは考えられない低い声で唸るようにそう言った。

 色々突っ込みたい所はあったが、まず番号を見たとかではなく盗った表現に明らかな悪意を感じるんですけど。


 とにもかくにも、俺は不審者からの要求に答える気は更々ないので、前日の残り物と瀬戸が希望したおかずが詰まった弁当を食べようと、いただきますをした時だった。

 机に置いた携帯が震えた。
 見ればさっきと同じ番号。
 うるさいので迷わずそれを切った。
 そしてそのまま未登録の着信拒否を設定した。
 これでおっけー、よし食べよう。



 ‐ ぴんぽんぱんぽーん。



『───お知らせします。2年A組の仁科諒さん、至急生徒会室までお越しください。お知らせします、』


「……」
「チッ」
「うわー」
「流石だね」
「まさかの呼び出し…っ」
「唯、落ち着け」
「……」



 無言の蒼司と目が合う。
 瀬戸の舌打ちはごもっともであるが、伊織の流石だねはきっと悪い意味だと思います。



 


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