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04
 


「なんだ、あいつ、ちゃんと弟を見てるんじゃない」



 宗也さんを見送り、呆れながら言った夏樹さんは微笑んでいる。



「…夏樹さん?」
「嫌われても心配なのよ」
「……あいつは自分に迷惑かけなきゃいいってだけだ」



 自身の言葉に否定を返した瀬戸を、夏樹さんは優しい目で見る。



「そうとも取れるけど、まあ、自分の事は自分で何とかしろってことよね」
「……」
「あいつは和史君を嫌ってるわけじゃない。強く生きてほしいだけよ」
「……あんたにはわかんねぇよ」
「分かるわけないわよ他人なんだから」



 なに言ってんの、みたいに溜め息を吐いた夏樹さんを瀬戸が睨む。が、夏樹さんは意に返さず、微笑んでいる。



「他人だからこそ分かることもあるのよ」
「……なんだそれ」
「あんたたちは高校生で、未成年は基本的に親や成人にとって子供なのは分かるね。まあ、親にとっては子供は子供だけど、成人すれば、概ね責任は自分にシフトされる。それを受け止めて抱えるには、親や兄弟に頼りすぎる癖をつけさせては上手く出来ないのよ」
「……だから、」
「親類と険悪になれば、ただグレるか、自立するか、どちらかになる。宗也は和史君がただグレるガキになるんじゃなく、自立すると信じてる」



 なにを根拠に、と小さく言って目を細める瀬戸。



「根拠はないけどあなたは今、親の手を借りても独り暮らしっていう自立のスタート地点に立っている。宗也はあなたと衝突することで、嫌われることで、あなたを守ってる」
「……守る?」
「自分の身は自分で守る。そして同時に現実と向き合う強さと覚悟を持たせる事で、あなたの周りも、自分で守ることが出来る糧になる。あいつは、あなたが思っているより色々考える変なヤツだからさ」
「……」
「側にいること、心身を害から弾く事や無くすこと、そればかりが誰かを守るってことじゃないと思うのよ」



 黙り込んだ瀬戸を夏樹さんは少しの間見つめ、それから笑った。



「なんてね、ごめんね偉そうに言って。じゃ、帰ろ」
「……う、うん」



 よく分かんないことばっかりだけど、瀬戸は反抗を止めて夏樹さんを見たまま黙り込んだ。


 気まずい雰囲気に───なぜかならず、夏樹さんは幼馴染みカップルと楽しそうに会話しながら帰路を歩く。
 その後ろで瀬戸と歩いてるけど、考え込んでいるのか眉間にシワを作ったまま無言が続いた。



 


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