03
混乱しながらも瀬戸と宗也さんを交互に見てしまう。
目付きは正反対……、あれ?宗也さんは柔らかい感じがあると思ってたけど、何だか冷たい印象も抱く。
言わずもがな瀬戸は目付きが鋭く、そこには冷たさもある。っていうか宗也さんを睨んでいる。
仲が、良くないのか。
「……ッチ、胸糞悪ィ」
「そのまま返すよクソガキ」
「あぁ?」
「若気があるのもいいけど、いつまでもそれじゃあ社会で生きていけないって言ってるだろ」
「てめぇに言われなくても分かってんだよ。鬱陶しい」
いや、これは…かなり仲が悪い。
顔合わせたらこうなのか…?
隣で夏樹さんは笑ってる。いやいや笑えないから。大人だな夏樹さん。
いや…あれはただ面白がってるだけだ。
忌々しいという感情を全身で垂れ流す瀬戸に、宗也さんは溜め息を吐いたが、ふと瀬戸をじっと見つめて、何かに気付いたように目を瞬いた。
「……お前、」
「……んだよ」
「すこし、角が無くなってきたか?」
「は?」
宗也さんは瀬戸の全身を見回してから、なぜか俺と目が合う。
凝視されて訳も分からず首をかしげると、「ああ」と納得したように頷いた。なんだ。
「君がそうしたのか」
「へ?」
「いや、気にしないでくれ。───夏樹、僕はもう行くよ」
「え、うん」
「てめぇ訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ」
踵を返そうとした宗也さんに、瀬戸が食って掛かる。
睨み付ける瀬戸を気にもせず宗也さんは目をあわせると、少し笑った。
「和史、お前、自覚はしているな」
「はぁ?」
「現実と向き合う覚悟がお前にはあるのか」
「……」
「生半可では、互いに傷つくだけだ」
「……るせぇな。分かってんだよ、んなこと」
「……」
「……」
睨み合ったまま、よくわからない会話をする兄弟をただ見つめることしか出来ない。
二人は少し黙ってしまったが、宗也さんが目をそらす。
「……お前が何を選ぼうが、僕にはなにも関係ないことだ。意味は分かるな」
「誰がてめぇを関わらせるかよ」
「ならいい。───…諒くん、」
いきなり呼ばれて弾かれるように宗也さんを見ると、その目はどこか、優しさを感じる。
「……愚弟をよろしくね」
「へ?…え、はい」
「それじゃ」
結局最後までよくわからないまま、宗也さんは行ってしまった。
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