02
ちらりと後ろの席に目を向けると、予想外にばっちり目があって、あからさまに体ごと前を向いてしまった。バカか。
…あー、うわー、めっちゃ突き刺さる。懐かしい視線の針が背中にチクチクと。
前を向いてても意識が後ろにいって、恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
「諒、なんで顔赤いの」
「……っ、きにすんな」
「…うん」
おうふ。
前後からはキツイ。精神的にキツイ。
蒼司が小声だったから周りには聞こえなかったようだけど、これはマズイ。
色々と内面的にまずい。
───好きだと気付いてしまえば、それは一直線で、溢れんばかりに出てきてしまった。あの夜からずっと。色々耐えられない。
「……」
やっと落ち着いたかも、と思って片手を口元に被せると、前にいる蒼司と目が合ったと思ったら、蒼司が目を見開いた。
「……諒、もしかして、」
「……」
ずいっと顔が近づき、囁くように言われるも答えられず目を見続けていた、が。
突然、ぐいっと腕を後ろから引っ張られ首に腕が回って背中が後ろの机にぶつかった。
衝撃にびっくりして咄嗟に上を向いた瞬間、言葉を失った。
「───近すぎ」
「今更なに嫉妬してんの」
頭上で聞こえた低い声に、はっと我に返ったけど、ちょっ、やばくない?
だって腕、腕が首に、ってかちょ、顔近、いや頭が体に当たってるような気が…!
机を挟んで後ろから抱き寄せられた、と理解した瞬間、落ち着いたはずの熱が瞬時に復活した。ぼん、と。
「てめぇ、さっきから近づき過ぎなんだよ」
「はっ、さっさと言わない奴に言われたくないね」
「んだと?」
「なに、やる?ヘタレ不良」
「あぁ?上等だこのエセ紳士が」
「口悪いと嫌われるよ」
「てめぇが言うな」
「俺はそんな厳つい言葉使いしないし」
「ハッ、どの口が言ってんだ」
「君がなにに嫉妬しようが勝手だけど、ものにしてないうちは何をしようと俺の自由。まあ、ものにしようと関係ないけど」
……な、なんだろうこの頭上で交わされる火花と口喧嘩は。
本当に相性悪いなこの二人。
つうか蒼司、会長と会話してるとき結構口悪いから。
「一人を取り合うイケメン二人…たまらんけしからん、もっとやれ」
「唯、息荒いっすよ」
「微笑ましいね」
「もどかしいけどなぁ」
ちょ…っとそこの四人、笑ってないで助けてください。
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