あわてんぼう。‐01
週末にそんな事があって、休みが明けたある日の昼休み。
「───え、ケンカしてんの?」
「ケンカじゃないけど…、よく分かんない」
目の前で溜め息を吐いたタレ目は、多貴の席に座り俺の机に頬杖をつき窓の外をぼんやりと見ながら言った。
10月末に行われた文化祭後、蒼司は今のところいつも教室にいて、生徒会室には行ってないらしい。
なんでも後夜祭の時に会長から「しばらく来るな」と言われたんだとか。何してんだあのヘタレ。
文化祭中の監禁で悩んでる風ではあったけど、なんか、関係が悪化してるような。
「でもさ、時々会計と一緒に居るよな」
「向こうが来るから。寂しそうな顔されたら蔑ろに出来ないし、そもそも会長とはケンカするような仲じゃない。散々引っ張り込んでたクセに急に来るなってさ、腹立つよね」
おお、饒舌。相当ムカついたんだろうな。
ただ、「会長」「来るな」って言葉を言うときに辛そうに目を細めているのを見ていると、蒼司にその自覚があるのかどうか。
とりあえずは、会長が言ったことは何とも仕方ないというか。
巻き添え食らったんなら文句は言うけど今回はそうじゃないし。
向き合えとかちゃんと見ろとか偉そうなことを散々言ったけど、それが遠ざける結果になったとは。すまん蒼司、それ俺のせいかも。
まずったな、と思っていると、蒼司がまた無意識なのか溜め息で上の空。
こりゃあ……、相当気にしてんな。
「───甘ったるいのもイイけど拗れカップルも美味しい…。元恋人で相談役とかなにそれメシウマ。でも落ちてる姿も滾るけど甘い笑顔のデレも見たいなあ」
……聞こえてますよ桜井ちゃん。
沈むに沈めなくて幸丸の方を見れば、桜井ちゃんに幸丸が何かを言い聞かせてた。親子か。
「安心するにゃ早いぞ瀬戸ちん。復活愛とか侮れないから」
「うるせ」
後ろは後ろでなんか妙な会話してるし。
分かんないようで分かるけど分かりたくない複雑なこの感じ。
復活はないけどな。
分かっちゃったし。分かったっつーか吹っ切れたっつーか。
まさか自覚してこうまで見る目変わるとは思わなかった。
元々見た目は良いんだけど、なんつーか、こう…。
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