02
寝返りで仰向けになり、天井を見つめながら溜め息が出た。
「……俺、馬鹿だな」
『ん?』
「自分で思ってることが矛盾してて、バラバラで、よくわかんねぇ」
『うん』
「同じじゃねぇって分かってるのに、同じじゃないとダメだとか思ってたんかな」
『諒は諒だよ?』
優しい、包み込むような声に、電話の向こうで伊織が微笑んでる気がした。
『僕は僕で、多貴は多貴で。考えも好みもみんなバラバラなんだ』
「…うん」
『諒の気持ちは諒だけが決められる。他の誰かとか環境とかで間違いかどうかなんて決まらない』
「……」
『好きも嫌いも、その気持ちは周りがどうとかじゃなくて自分だけのものだよ』
何となく、伊織は分かってるような気がした。
俺が何に悩んでぶつかってるのか。
『僕だってさ、多貴が好きで一緒に居たくて、でもそれが間違いだって言われた時に思ったんだよ。この想いは僕のもので、誰かに正しいとか間違いとか決められる筋合いはないんだって、ふざけんなってさ』
「…男前ー」
デレた、と思ったら辛辣な言葉が出てきて笑ってしまった。
伊織も多貴も、そうやって違う壁にぶち当たったんだと思い出す。
『誰を好きになろうと他人には何の関係もないよ。確かに僕の家は昔から跡継ぎが必要だから、必然的に僕にもその役目が与えられる。でもね、父さんが言ったんだ』
「要さんが…?」
『うん。伊織の人生は伊織のものだから、本当にそれが幸せなら、それを選べば良いんだって』
「……」
『自分も周囲の反対を押しきって結婚したんだし、それがどんな人でも、例え同性だって、幸せならいいって。そう言われた』
「……っ」
『だから僕は選んだ。諒も選べるよ。幸せになる選択が、もし目の前にあるなら。その先で不幸だったって、また選べば良い』
「…うん」
気付けば泣いてた。
ボロボロと溢れて止まらない涙で、視界がぼやけてる。
『大丈夫だよ』
「…っ、ん、ありがと」
『いっぱい泣いてすっきりして、お風呂入って御飯食べて、それから沢山寝ようよ』
「…わか、った。そうする。伊織、」
『うん?』
「ありがと。大好きだ」
『僕も大好きだよ。また明日ね』
「おう」
いつも俺を支えてくれる幼馴染みたちが、大好きだ。
その夜俺は、馬鹿みたいに沢山泣いた。
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