見つけたものは。‐01
帰宅してすぐ、部屋に入って制服のままベッドにダイブした。
うまく頭が回らない。
俺が今まで大切に思ってきた二人が幸せそうな姿を見れば嬉しかったはずだ。いや、嬉しいんだ、今だって。
蒼司と会長のことも、うまくいってるかどうかは分からないけど互いに何とか歩み寄ろうとはしてるように見える。
ちゃんと気持ちを返せなかった俺からすれば、蒼司が愛される事はとんでもない喜びであり幸せでもある。
ただ、あの時、俺は瀬戸に───男に対してドキドキするのは変じゃないかって言った瞬間に、自分の言葉なのにショックを受けた。
本当は、自分はそんな気持ちを同性には抱かないなんて思ってたんだって、違うとは言い切れない言葉を。
あり得ないとか、気持ち悪いとか、そんなことは思ってないのに、自分の恋愛対象は異性だと思ってたのかな。
じゃあ、この気持ちは何なんだ。
じゃあ、多貴と伊織や蒼司と会長に対しての気持ちは何なんだ。
「……いてーなぁ…」
ズキズキ、ぎゅうぎゅう。
頭と鳩尾が痛くて、締め付けられて、頭の中だけが妙に熱くて。
シワになるのも構わずに胸辺りのシャツを握り締めた。
蒼司のことが引っ掛かってるんじゃない。
これは、俺の偏見なんだ。
泣きたくなって、鼻腔がツンとした。
なんで俺が泣きそうになってんだろう。
嫌だ、と思って目を閉じた時、スラックスに入れたままの携帯が振動した。
体勢はそのままに右手でポケットを探り、長い振動で電話だと気付いてそのまま応答してスピーカーに切り替える。
「……はーい」
『もしもし、諒?』
「……」
周りの音と一緒に、伊織の声が聞こえてきて。
なんてタイミングだよ、なんて少し笑った。
「どーした?」
『うん、何となく、電話しようと思って』
「すげータイミング」
『珍しく声が弱いね』
「…ん、まあ、自己嫌悪中」
『明日は雨かな』
「えー、なにそれ」
『弱ってる諒なんて珍しいからね』
「…まあ、ね」
変わらない穏やかな声に、絶妙なタイミングに、さすが幼馴染みというかさすが伊織というか。
たぶん、他の誰かだったら、こんな素直に心配させるようなこと言わないんだろうな。
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