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04
 


「……真っ剣に悩んでるとこ申し訳ないんだけどさ、」


 申し訳なさそうな顔の睦月さんに、思わずマイナスな返事を予想してしまう。
 しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。



「俺からすりゃ変じゃないよ、それは」
「……へ?」



 声が裏返った。恥ずかしい。
 睦月さんは穏やかな笑顔で続ける。



「つまり、諒くんはその瀬戸っていうクラスメートが好きなんだよ」



 ドキリ、と一際波打った鼓動が、じわじわと全身を侵食していく感覚に陥った。
 睦月さんが「たぶんだけどね?」と笑っているのに、よく聞こえなくて。

 え、うそ。



「……す、き…?」
「そう。恋愛感情で好き。ラブ」
「…Likeじゃなくて?」
「ノンノン、Love」



 真面目な顔で言い返され、今度は思考が停止した。



「それにさ、フォローとかじゃないんだけど、俺からすれば異性同性とか別に関係ないと思うんだよね」



 そう言って笑う睦月さんの言葉は、とても説得力を帯びていて。泉さんも睦月さんを見ている。
 ちょっとだけ思考が復活したものの、すぐにまた衝撃を受けた。



「だってさ、聞いてよ。俺の周りの人達なんて所構わず抱き着いてきたりキスしてきたりするんだよ?」
「ちょ、はぁ!?」


 反応したのは泉さんだった。なぜ。
 いやいや、そこじゃない。え、ちょ、睦月さんいまなんて?



「……キス?」
「そ。ちなみに俺は、人をひとりの人間としか思ってないから異性とか関係ないんだよね。周りもそうっぽいの」



 類は友を呼ぶってこと?
 それよりも気になったのは、ひとりの人間として見ている、という言葉。つい口から溢れてしまった。



「だから、誰を好きになるのが良いとか悪いとか、そんなもん誰かが決められるような事じゃないっしょ? 好きになったら好きなんだから、堂々としてりゃいいの」



 ああ、この人は知ってるんだ、と思った。
 異性とか同性とか取っ払って真剣に向き合っている人を、きっと身近で知っているんだと。それは憶測でしかないけれど。

 そして俺も思い出すんだ。
 自分の身近にそういう大切な人たちが居ることに。
 俺は、さっき、まるで拒絶したみたいに可笑しいことだと言った。自分でもその立場にいたくせに、大切だと言いながら、結局世間体を気にしてた。
 馬鹿だ。
 俺はどうしようもない馬鹿だ。

 そんなんで、どうして伊織や多貴を大切だなんて言える?蒼司と会長のことだってそうだ。
 俺は悩みすぎて、周りが見えなくなって、世間の常識に囚われた。
 向き合おうとしなかったのは。
 知ろうとしなかったのは。
 結局どっかで、自分はそうじゃないと思ってたってことだ。
 なんでこんな馬鹿なんだろ。
 俺、あいつらに顔向け出来ねぇ。


 


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あきゅろす。
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