03 …なーんて、思ってた昨日の俺よ、今凄く現実逃避をしたい。 昨夜に色々ゆっくり考えよう、なんて思って寝た翌日、2A教室いつもの席。 前に多貴、横に伊織、後ろに瀬戸、その横で自分の使っている机に寄り掛かる幸丸、そして新たに幸丸の席には桜井ちゃんが座っている。 俺も多貴も横向き、珍しく伊織も体ごとこっちを向いていて、誰もが無言である一点を見つめている。 「……なあ、」 「あ?」 沈黙に耐えきれずに声を掛けると、何だよ、というような返し。 「なにしてんの、お前」 「なにって、」 ちなみに今は昼休みである。 ご飯を食べ終わって雑談してたんだけど、なんなのこの状況。 いつもは賑やかな教室が今日は静かで、囁き合う声と突き刺さる視線が居たたまれなさを増大させる。 一番俺が居たたまれないと思ってるのは、この不良擬きの行動なんだけど。 右手の軽い圧力と共に瀬戸が言った。 「手ぇ弄ってる」 なにがどうしてそうなった。 右手の自由はなく、左手で頬杖をついてぼんやり横目で瀬戸を───いや瀬戸の手元に目を向ける。 うにうに、なんて可愛らしい効果音がつきそうな、手の動き。 なんで俺、瀬戸に右手拘束されてんの。 「なにこれ」 「さあ。瀬戸ちん吹っ切れたんじゃね?」 多貴に問い掛けるとそんな答えが返ってきた。…え、何を吹っ切ったのコイツ。 瀬戸は俺の掌を親指で押したり指を撫でたりして遊んでいる。雑談してたら急に手首を掴まれての今の状況である。 クラスの八割が視線を向け、俺らが無言になっている理由がこの瀬戸の行動。 ちなみに桜井ちゃんは瀬戸が俺の手を掴んで遊び初めた途端に机に額をぶつけて、今はそのまま震えている。大丈夫か。 ほぼ全員が驚愕の目ですよ、ええ。 あの瀬戸が…!みたいな。俺が一番驚愕です。 「微笑ましいね」 「なぜそうなる」 にこやかに、きれいな笑顔を見せて言った伊織に思わず突っ込んだ。 微笑ましいってなに。 「まー、諒ちんのイチャコラしてる姿なんて激レアもんだしねえ」 「まって。まてまてコラ」 イチャコラってなんだよ! お前なんか伊織の毒舌でケチョンケチョンにされちまえ! 「多貴、イチャコラって古くない?」 「そー?」 っ、伊織さぁあぁぁん!? 突っ込むとこそこなの!? [*][#] [戻る] |