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02
 


 …あー、気まずい。
 なにがって、空気が。
 どうやって脱出しようか悩んで無言を貫いてたのに、意味が分からない放送が聞こえて無駄になった。
 なにあの放送。俺がいつ調教師になったのかと是非問い詰めたい。
 どこのどいつだゴラァ!
 めっちゃ見られてんじゃん!
 めっちゃ会長に見られてんじゃん!
 お前そんなヤツだったのか的な視線がグッサグサ刺さるんだよ!
 これで声に出されたら俺のHPはごっそり、



「…お前、調教師だったのか」
「ちげぇよ!」



 …言ったよ!言っちゃったよこの人!
 いや空気読めよ!そこは無言で心の中だけに留めとけよ!
 普通に突っ込んじゃったじゃん!


 はあぁぁ、と深い溜め息が出る。
 隣をちらりと見ると、何とも言えない表情の会長。



「……なに、その顔。すんごいムカつく」
「知るか変態」
「いやあんたに言われたくないんですけど!?」



 蒼司のストーカーしてるくせに、とは言わない。別に本当にストーカーしてるわけじゃねぇし。
 ただ変態呼ばわりだけはされたくない。変態はむしろ会長の方だ。

 ていうかなんで俺なの。俺なんかした?確実に俺狙いだよなアレ。わざわざ調教師とか言いやがって。調教してねぇよ。
 狼から犬、調教。
 ろくなこと言いやしない。
 だいたい俺が何をしたっていうよりアイツが勝手に絡んできて───…あ、あー…なんか犯人が分かりそうな気がする。



「なんか知っているのか、変態」
「ッ、だからアンタが言うな!?」



 気がするのにダメだ飛んだ。会長がバカ過ぎて考えがまとまらない。邪魔しやがって。
 ていうかなんで会長と俺なの。嫌がらせか?嫌がらせなのか?アリスといい調教師といい会長と二人で監禁といい、本当になんなのコレ。



「……てか、本当なんで会長捕まってんの」
「お前に言われたくない」
「この…っ、……まさか生徒会長サマがこんな風に捕まってるなんてねー」
「……」



 よし黙った。
 いや違う。なんか違う。

 とりあえずここは協調性を持ってだな、



「会長、犯人見ました?」
「……金髪が見えた」
「……」
「……」



 つ、つかえねええええ!
 無理だろ協調性とか!誰だよ協調性とか期待したやつ!俺だよちくしょう!
 つか金髪…金髪って!
 んなもんそこらへんにゴロゴロ居るだろ!なんかこう、もうちょっと役立つ情報ねぇのかよ会長のくせに。



「…オイ、全部声に出てんぞ」
「おっと。さーせん」



 そして呆れた視線をいただきました。
 ものっすごく、いらねえ。

 じゃなくて。
 どうしてこう、俺はこの半年で似たような目に合うのか。あれ、厄年だっけ…?とか勘繰るレベルで既視感半端ねえ。
 しかも犯人がいないっていうこの放置加減。今時の監禁犯は姿を見せないっていう共通の意識っていうか、え、なに、そういう感じなの?
 縛って監禁して犯人は姿見せない時代なのか?


 …まあ、ずっとこのままってことはまずあり得ないだろうし、トイレとかどうすんだろうこういう場合って。
 暗幕に囲まれてるけど教室だよな。放送聞こえたし。
 携帯だって───携帯?



「会長携帯ねぇの?」
「……」
「あー…うん、分かったもう話し掛けない」



 どんだけ使えねぇんだこの生徒会長。
 いや俺も携帯持ってないけど。エプロンのポケットに突っ込んだはずの携帯がどこにもない。
 まあ持って行かれてるよねー、だよねー。はあ…。

 会長は監禁に焦ってる風には見えないし、もしかして本当にドッキリイベントだったりすんじゃねぇのかとか色々考えるけど。

 ドッキリイベントなら、わざわざ会長を縛って俺をぶん殴って誘拐して縛って転がしておくか?
 わ、ざ、わ、ざ、俺を調教師とか言うか?生徒会役員がそんな意味不明な事やるわけない、という俺の勝手なイメージだけど、そういうのがあるし。
 うーん…わかんねー。



 


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