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やっぱりこうなるのね。‐01
 


 ───鈍い頭痛に、ぼんやりと目を開いた。
 ひやりとした床に頬をつけているせいか右側だけ妙に冷えてる。
 徐々にはっきりしてきた意識に、視線を巡らせれば周りは薄暗く、かなり静かで吸い込む空気も冷たい。

 そこで、ふと違和感に気づいた。



「……、…ん?」



 起き上がろうと無意識に力を込めた腕に、圧迫感というか、とりあえず動かない。
 そんでやけに足の風当たりが良い。
 床に肩を押し付けて体をひねり、視線を足元へ向けてそこに見えたものに俺は自分の格好を思い出した。

 そういや、俺、アリスのままじゃん。


 いやいや違うそこじゃない。
 青と白のエプロンとかスカートとかニーハイとか、ぶっちゃけもう見慣れた。それはいい。まあ、ちょっと際どいくらい捲れてるけど。
 顔に掛かる髪の毛とかウィッグも付けっぱだったなって思い出した。うん。それも別にいい。

 でもさちょっと待って。
 なんで俺、縛られてんの。



「……起きたのか、」
「ッ、うぉっふ!?」
「……」



 突然背後から掛けられた声に素でびっくりして変な声出た。ちょっと恥ずかしい。
 恐る恐る体を反転させて、一息ついて目に入ったその姿に、一瞬反応が出来なかった。



「……なんでいんの、会長」
「!、…お前かよ」
「は?……あ、」



 何言ってんだこいつ、とか思ったけどそうだよ俺さっき思い出したじゃん。
 女装したままだった事を思い出して、なんとも気まずい空気が流れた。

 会長には見られたくなかった。
 本当に見られたくなかった。



「そういえば、お前の所はコスプレ喫茶店だったな」
「…そーすね」



 知ってますよねそりゃあ。
 でもまさか俺が女装しているとは思ってなかったはずだ。考えてすらなかったはず。だって会長は蒼司しか興味ないし。たぶん。いや知らねぇけど。


 とりあえず起きよう、と後ろ手に縛られたまま俯せになり、スカートを気にしながら何とか座ることに成功した。



「…そのナリで胡座はやめとけ」
「いや別に誰も見てねぇし」
「……」



 スカートで胡座は確かにアレだけど、会長と二人なら別に問題ない。会長だし。


 改めて今いる場所を見回すと、どっかの教室っぽいけど暗幕で囲われてて窓もドアもどこにあんのか分からない。
 人の声すら聞こえないってことは、防音されてる部屋なのか?
 ていうかそもそも学校なのか?


 なんか既視感あるな、と思いつつ見回すも暗幕のために何も見つからず、会長の方に目を向けた。同じように後ろ手に縛られて座ってるけど、暗幕を背にそこに壁があるのか寄り掛かってるっぽい。

 会長は特に焦ってるようには見えない。
 いや、焦ることがあるのか分からないけど、いかんせん会長に対するイメージがヘタレっぽくて、噂で聞いてる会長のイメージが美化されてるようにしか思えない。
 ただ、諦めてるような、どうでもいいようなそんな感じに見える。



「……っ、」



 色々考え込んでたら後頭部が傷んで、反射的に唇を噛んだ。
 そうだよ、俺なんでここにいるんだ。

 休憩貰ってアリスのまま連行されて親子で戯れて(ほぼ突っ込みだったけど)、色んな教室を回って、人目に晒され、多忙な両親は長居できないみたいで、泣きながら、マジで泣きながら抱きしめられて締め付けられて、門まで送って、そのまましばらく見送って、で、戻ってる途中で後ろからがつんと───。


 んん…?俺を狙ったならアリスな後ろ姿だったら分かんねぇんじゃ…?
 いや前から見ても微妙だろうけど。
 俺じゃなくても良かったとか。
 なんで会長と俺なんだ?
 後ろ姿が弱そうだったからとか?
 会長はなんで捕まってんの?


 訳も分からないまま疑問が疑問を呼んで、頭痛がした。



 


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あきゅろす。
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