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02
 


「───説明してもらおうか」



 その唸るような声に、無意識に三人の眉間に寄る。
 扉の前には冷たい目をした風紀委員長、南航弥が立っていた。容姿はかなり整っていて、切れ長の鋭い目付きに黒髪、ぴっちりと制服を着たその姿はまさに風紀にぴったりだが、違反者には容赦がなく冷酷だと噂されている。

 犬猿の仲、というほどではないが、その雰囲気が好きになれない。生徒会役員を平然と能無しだと言い切る人間だ。



「生徒会では先ほどのドッキリイベントの企画はありません」
「そんなことを聞いているんじゃない。生徒会の長は、どこの誰とも知らない奴に捕まるほど腑抜けになったのか?それともあいつ個人の気まぐれか?」
「五十鈴会長はそのような戯れなど致しません」
「だったらさっさと見つけ出せ。こっちは生徒の抑制で手一杯でな」



 表情を変えない二人、双葉と南が会話をするも、しかし南の言葉にぐっと憤りを押さえ込む。
 生徒会長と肩を並べるほど有能であるはずの風紀委員長が、たかが校内にいる生徒や来場者の混乱を沈めるのにそんなに手間取るはずはないと、三人は分かっていた。
 分かっているが、何を考えているのか分からないこの男にそれを言ったところで、「手を借りなければ自分達の上司一人見つけることが出来ないほど能無しなのか」、と余計に罵られるだけなのだ。

 ここはただ素直に捜索の心当たりがあることを示し、追い返すしかない。

 南はただ確認しに来ただけなのか、すぐに戻る意思を示し、己の持ってる情報を提示した。



「───とにかく、何も要求がないから狙いも分からないが、早く見つけることに越したことはない。放送室には直後に向かっているが無人だった。目撃者もいない。風紀委員が正門で待機してはいるが、声だけでは皆目検討がつかないから見つけるのは無理だろう。生徒会長を見つけて事情を聞くのが早い。身内の事は身内でなんとかしろ」



 一方的にそういい放ち、南は踵を返して生徒会室から出ていった。

 扉がしまり、ピリピリしていた空気が少し和らぐ。



「やっぱりあいつ嫌い」



 ぶす、と不貞腐れたように眉を潜めたまま、直也はいつもより低い声で唸った。
 そこには同意なのか、双葉と葵はため息を吐くだけで何も言わない。
 とにかく会長を見つけなければ。
 手当たり次第でもいい、三人手分けして探し、携帯で連絡を寄越すようにと決め、それぞれ生徒会室から出ていった。














 時を遡り、監禁宣言の放送が流れる数秒前。人目を引く容姿をした二人が南ヶ丘の門を潜った。



「───なぁんか、面白いことやってんね?翔ちゃん」



 艶やかさのあるド派手なピンク色の髪をポニーテールに結い上げた男が、放送内容を聞いて甘い棒付き飴を揺らしながら笑った。



「慧、面倒な事に首を突っ込むなよ」



 翔ちゃん、と呼ばれた隣に立つ男はピンク頭の男を慧と呼び、心底面倒臭そうに顔を歪めた。
 短い黒髪に気だるそうな強面ながらも男前な容姿。その見た目であっても世話焼きを滲ませる苦労人である。



「可愛い可愛い後輩に会いに来ただけだって。だいじょーぶ」
「……」



 ただの甘党仲間だろ、と突っ込みたかったが、言ったら言ったでこの幼馴染みは話を脱線させて面倒臭い、という理由で「え、無視?翔ちゃーん」と呼びかけられても無言で歩を進めた。


 


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あきゅろす。
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