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02
 


 真横から物体が突進してきて横にスッ転びそうになって身構えたけど、いつのまにか近くに居た瀬戸が受け止めてくれた。
 いやさっき反対側に居たよな…?と思ったが、助けてくれたので言わないでおこう。



「かーわーいーいぃぃぃッ!」
「ぃいだだだだっ!痛い母さん死ぬ!」



 そして横から抱きついてきた物体…こちらも年齢不詳な見た目をしている、紛うことなき俺の母さんが叫びながら全力で抱き締めてきてっていうか本当に潰れるから…っ!

 突然の騒ぎにお客様もクラスメイトもびっくりして、注目のまと。ごめんなさい。



「っていうか何で横から…」
「ちょっとお手洗いに行ってて、戻ってきたら正仁さんが超可愛いアリスとお話ししてるから絶対に諒ちゃんだって思ってつい飛び込んじゃった!」
「突っ込むところが色々あるけど、飛び込むのは止めようぜ…。…ありがとな瀬戸」
「……いや、」



 その超可愛いアリスというのが俺だと確信した母さんもある意味強者というか曲者だけど、なぜ息子に飛び込んじゃったのか。

 しかも俺の父さんと母さんのダブルパンチに瀬戸が戸惑っておる。
 そりゃそうだろうな。高2の息子が居るようには見えない見た目なのもあるが、第一にこのテンションである。息子である俺でも一歩引いていたいこのテンションである。



「あら、ごめんなさい。え、と…」
「俺の友達。瀬戸和史」
「……はじめまして」
「はじめまして!和史くんね、格好いいじゃないの諒ってばやるわね!まぁ正仁さんには敵わないけど」
「嬉しいね、怜は誰よりもずっと綺麗だよ」
「やだ正仁さんってば」



 第二にこのラブラブっぷりである。
 互いに互いが世界一だと本気で思っている二人は、ずっとこうで俺も反抗期なんてありませんでした。まじで。反抗したら倍の勢いで違うものが返ってくると思うから。



「二人の世界に入らないで貰いたい」
「ごめんね諒ちゃん、拗ねないで」
「拗ねてねぇです」
「諒はいつまで経っても可愛いね」
「嬉しくねぇです」



 会えばいつもコレなんだから……、会えるのは嬉しいけど、年イチだから慣れない。愛されてるとはおもってるけど。これで愛されてないとか思えないから。まじで。


 つい遠い目をしていると、少し離れた母さんが瀬戸を見ている。にこにこしながら見ている。
 そして何を思ったのか瀬戸の前に来てその手を両手で握った。どうした母さん。



「不束な息子ですけど、よろしくお願いしますね」
「え、あ、はい。」
「ちょ、何言ってんの母さん!?何受け入れてんの瀬戸!?」
「いや、イイコそうじゃないか。息子がまたひとり増えるのかな?」
「いや何言ってんの父さん!?」



 息子がひとり増えるってなんでそうなった!?どういう流れ!?なにこれ!?

 誰か助けて!と混乱していると、背後から両手が伸びてきて体が跳ねた。



「あーらら、目を離すとすぐこれなんだから」
「夏樹さんんんん…」
「たった十分でこれね、さすがあんたの両親」
「もう意味わからない。なにこのカオス」
「面白いからいいじゃないの」
「挟まれてるの俺なんだけど」
「仕方ない」



 いや助けてくださいマジで。

 きっと受付にいる多貴と伊織にも絡んだんだろう。あの二人にも息子増えるのどうのとか嬉しそうに言ってたし、あ、なら別にいつもの事じゃん。
 …ん?でもなんかニュアンスが違っていたような───



「……良いわね?いくら可愛いからっていきなり襲っちゃダメよ?大事に大事に育んでからがっつり行きなさい」
「そうだね、最初のうちは余所見する余裕を無くすのもいいけど、マンネリすると大変だから気を付けようね」
「…あ、はい。分かりました」

「───っちょっと待てコラァ!なんだその明らかにおかしいスルー出来ねぇ会話の内容は!?つうか瀬戸!お前も普通に返事してんじゃねえよ!」
「諒、喉渇れるわよ」



 これを突っ込まずにいられるかッ!



 


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