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前日も暴走。‐01
 


 運命(?)の文化祭前日。
 学校中が文化祭の雰囲気に包まれて、広い廊下や校庭には屋台が出来上がり、教室で催しをするクラスの前にはカラフルな看板がずらり。
 そんな中、俺がいるAクラスの面々は、まっつんのHR後に家庭科室に集まっています。
 今日はコスプレの衣装公開に最終確認をするよ、と桜井ちゃんがイキイキしながら言った。



「うちのメインである接客担当は最後に回して、他のメンバーは準備室に行って下さーい。ちゃんと着替えは男女で別れてるから安心して」



 どうぞー、と準備室へ続く扉を開けた桜井ちゃんにクラスメイトたちが入っていく。
 残ったのは、接客担当である俺と瀬戸、多貴に伊織と幸丸と蒼司、学級委員の廣田(大変不本意そう)に加え、桜井ちゃんが選んだ男女七名。男の割合が多いのは桜井ちゃんの意向であるらしい。幸丸が言ってた。
 それでも文句が上がらないのは、桜井ちゃんの勢いもあるけど、選出された生徒がみんな顔面偏差値が高いから。
 俺場違いじゃね?と思ったが、言ったらまた桜井ちゃんに勢い押しされるので思うに留めることにした。

 ちなみに接客担当に選ばれた女子のクラスメイトの選出基準は、桜井ちゃん曰く「化粧っ気のない女子がコスプレしてメイクしたら化けるからね」である。
 普通にメイクしてる子もいるが、すっぴんを見た上でレベルの高いクラスメイトを選出したらしい。
 女子は四人しかいないが、うち三人は桜井ちゃんと同じ様にノーメイクで大人しそうなイメージがある生徒。


 ニコニコしている桜井ちゃんを見て、ふと思ったことが口に出た。



「そういや、桜井ちゃんの担当は?」
「……あ、」



 どうやら忘れていたらしい。おい。

 どうしようかな、と悩みだした桜井ちゃんの前に、彼氏である幸丸がニコニコしながら寄っていった。その笑顔にちょっと違和感。



「ゆーいちゃん」
「……ヤダ」
「いやいや、これだけ好きにやっといてヤダはないっしょ?」
「……ヤダ」
「へぇ、ふうん、そうっすか」
「サチ、なにその腹黒い感じ。爽やかはやっぱり腹ぐ」
「唯が好きにしたんだから、オレも好きにしていいよな?」
「…っ、」
「い、い、よ、な?」
「……ぅあー…」
「唯のコスはオレが決めるから」
「嘘だ…」
「ふはははは。変にはしないから安心していいよ、ただ───」
「───…っ!悪魔め!」
「何とでも」



 てなわけで、こいつのはオレがやるっす、と振り返った幸丸はとても爽やかなイイ笑顔だった。

 幸丸が桜井ちゃんに顔を寄せた時になにを言ったのかは分からないけど、桜井ちゃんが悪魔と称したのにはそれだけの事を言われたんだろうな。
 ていうか幸丸が明らかにいつもと違ったんだけど、なにあれ。いつもの「っす」がなかったんだけど。なんか怖いよその笑顔。


 さっきまでの勢いが嘘のように、どよん、とした桜井ちゃんがちょっと心配になった。
 しかし幸丸の事だから、お互いに色々分かってるんだろうし酷いことはないんだろう。幸丸楽しそうだし。



 そんな様子を遠巻きに見つめていると、準備室のドアが開いてクラスメイトたちが出てきた。



「───ふはははは。やはり私の見立てに狂いなし!」



 クラスメイトの姿を見た桜井ちゃんは瞬時に復活した。さっきの幸丸と笑い方が似てたのは、付き合いが長い幼馴染みだからだと思う…ことにする。


 服装だけ変わったクラスメイトたちは皆嬉しそうに感想を言い合っている。
 中には魔女っ子とか吸血鬼っぽいのが居るけど、そういや今月末ハロウィーンだった。

 主にアニメキャラやハロウィーン仕様、チャイナやディ●ニーキャラクターの衣装などがちらほら。
 ウィッグもあるから、と桜井ちゃんは満足そうに言った。


 

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