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07
 


 何だかんだ(主に桜井ちゃんの暴走で)進んでいった文化祭準備。
 まさか桜井ちゃんがデザインを得意としているとは知らず、ちらっと見せてもらったデッサンは衝撃の既にプロレベルだった。

 桜井ちゃんの両親はファッションや雑貨などの様々なデザインを仕事にしているらしく、小さい頃から慣れ親しんだ環境故に美術や技術では常に素晴らしい成績を修めているのだとか。
 そんな桜井ちゃんの両親ともかなり仲良しな幸丸は、小さい頃から桜井ちゃんとくっつけばいいのにと言われていて、付き合うことになった時には赤飯を炊かれたらしい。
 しかも幸丸の両親も親同士仲良しなためにそれにノリノリで参加したとか。
 それを聞いて、いい関係ではないか、と微笑ましく思った。



 そんな文化祭準備も、当日まで一週間を切ったため授業なしで学校全体が文化祭準備に大忙しである。
 俺は迫りくる文化祭と前日まで秘密なコスプレ、更に今年は絶対に来るらしい父さんと母さんと夏樹さんの脅威に内心緊張と怯えでガクブルです。




 クラスメイト一丸で教室の内装を喫茶店らしく改装していく中で、教室の外に置く看板の色付けを任された俺と多貴、瀬戸。
 伊織?伊織は桜井ちゃんに誘か…連行されました。
 幸丸は窓にカーテン付けてる。



「え、二人とも来るの?」
「らしい。夏樹さんが言ってた」
「去年来られなかったじゃん」
「全力で仕事片付けるらしい」
「あー…、タイミングが良いんだか悪いんだかねえ」
「ね。絶対ヤバイだろ」
「頑張れ」
「薄情者」



 看板の色付けをしながら多貴に、父さんと母さんが来るらしい、とそれとなく言うと過去を思い出したのか遠い目をしながら多貴は苦笑い。だよねー。
 一緒に黙々と色を塗っていた瀬戸が「なんの話だよ」とため息混じりに言ってきた。



「諒ちんのパパママが文化祭来るんだってさー」
「パパママとかヤメロ」
「…は?」



 ぽかん、とした顔の瀬戸に苦笑いを返しながら頷く。

 瀬戸には俺の両親が海外に居て滅多に会えないことを既に話してる。だから、わざわざ文化祭のために仕事を片付けてまで帰国するのが不思議みたいだ。



「親馬鹿だからねえ、諒ちんの両親」
「……へぇ」
「まあ否定はしないけど。会えば分かる」



 瀬戸はあんまり両親と仲が良くないとは言ってたから、親馬鹿って言われても首をかしげるだけ。
 うちの両親見たらびっくりすんだろうなぁ、と思いながらペタペタと絵の具を塗り付ける。



「コスプレでお出迎えになるのかなー」
「……でしょーねー…」



 夏樹さん曰く、昼前に着くようにはするらしいけど、久々に会う息子がコスプレで喫茶店の接客係やってるとかさ、ね。普通にびっくりするよな。



「んな不安そうな顔すんなよ、瀬戸ちん」
「あ?…してねぇよ」
「大丈夫だって。諒ちんの親だよ?」
「……」
「いつも通りにベタベタしてりゃいーの」
「してねぇよ」



 何だかんだ、最近瀬戸は雰囲気が柔らかくなって、クラスメイトともたまに喋る。
 相変わらず目付き悪いしクラスメイト以外の生徒に対して態度は変わらないけど、クラスメイトに対しては随分対応が柔らかい。
 いいことだ、うんうん。


 


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