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06
 


 採寸をされている二人を見た後、次の標的を定めた桜井ちゃんは、俺の机の横にしゃがんでいる蒼司の前に同じ様にしゃがむ。
 キラリと眼鏡が光った気がした。
 …蛍光灯の反射かなー。



「───うん、霧島君に眼鏡装備しよう。細いシルバーフレームの眼鏡。ならばここは執事…物腰柔らかい雰囲気に隠れたヤンデレっぽいけど実はツンデレみたいな王道転入生な感じが本当にご馳走さまです。でも執事だから終始敬語で旦那さまとかご主人様とか言って我が儘な主人にドSか鬼畜でアッー!なお仕置きしてくれていいよ寧ろ全力でやれ。長髪癖っけを束ねて毛先を肩に垂らしてきっちり着付けて外面温和に内側鬼畜とかなにそれ滾る!」
「……、うん…?」



 蒼司は自分にも向けられた訳も分からない桜井ちゃんのマシンガントークにやられて、ちょっと首をかしげた。
 分かんないけどとりあえず笑っておこうってことですよね。

 そして桜井ちゃんは幸丸へと向き直り、にっこりと笑った。幸丸はそれに苦笑いを返すだけ。なにその意志疎通方法。スマイルコンタクト?スマコン?いや違ぇわ。



「サチは分かってるもんね?」
「……うぃーっす」



 明後日の方向を向きながら軽く片手を上げた幸丸と、満足そうな桜井ちゃんの謎の短いやり取りに首をかしげていると、桜井ちゃんは俺の前に立った。
 全身を眺める桜井ちゃんに、あのマシンガントークが始まるのかと身構える。仕方ないよ仕方ない。
 だがしかし。


 桜井ちゃんはにこっと笑顔をみせたので反射的に笑顔になった。ひきつったけど。
 



「うん、おとぎ話」
「いやちょっと待って!?」



 俺だけなんでそんな雑!?

 笑顔で頷いた桜井ちゃんに思わず突っ込んでしまった。
 え?という顔をしてますけどこっちがえ?なんですがね!



「仁科君はもう決まってるから!悩殺デザインも固まってるよ!前日までお楽しみにね!」
「いやいやいやいや」



 悩殺デザインってなに!?全然お楽しみじゃないから!寧ろ不安だから!
 なにこの対応!?と反射的に近くにいた幸丸の腕を掴んで揺する。



「あー…唯の中では一番最初に決まってたみたいっすよ、仁科のコスプレ」
「ぅえぇぇえぇ…」



 一番最初に決まってて何故一番最後に言った!?
 ちらと桜井ちゃんを見た俺は、ちょっと見たことを後悔した。



「ふ、ふふふふ…爽やか×無自覚美形…に嫉妬する不良…一方矢印で┌(┌^o^)┐関係とか…王道にありがちなアレですね分かります。2次元でしか拝めないと思ってたこの絵図が共学でしかも生で拝めるなんてもう爆発しそう…これは我がフレンドに報告せねば…!」



 なにアレこわい…!!

 口許に手を当てながらこっちを凝視してた桜井ちゃんは、完全に理解できない言葉をぶつぶつ言っていた。
 やばいってこれ大丈夫なの!?幸丸の彼女だよね!?そんな目で見ていた俺に、幸丸が笑う。



「大丈夫っすよ、アレだけどしっかりちゃっかりしてるし、まあ、可愛いとこもあるから」
「……男前だな幸丸」
「慣れっすね」
「……」



 あぁ、うん、鈴木くんとも友達だって言ってたもんね。
 桜井ちゃんも鈴木くんと友達だとしても可笑しくないし、寧ろこれでお互い友達じゃないとか言われたら俺それ疑うわ。
 あまりにテンションとか理解不能な言葉とか似てるし。絶対気が合いそうだし鈴木くんと桜井ちゃん。

 ……あれ、でもなんで桜井ちゃんは幸丸と付き合ってるんだろ。
 なんて失礼なこと考えてしまった俺に気付いたのか、幸丸が俺の手をつついて顔を寄せた。
 瞬間に桜井ちゃんが不気味に笑ったけどとりあえず流しましょう。



「あれでもちゃんと告白してくれたんすから」
「え、」
「嬉しかったんすよ、オレ。ずっと片想いだと思ってたら両想いで、中1ん時に顔真っ赤にして、まあ今みたいによく分からない事言ってたけど、唯から告白してきたんすよ」
「……へえ、」



 意外な過去ってわけでもなく、昔から桜井ちゃんは今と変わらなかったみたいだけど、それでも好きな人がいるって、普通じゃん。
 個性的な彼女と聞いてたからその理由は理解したけど、二人のやり取り見てるとお互い好きなんだなぁってよく分かった。
 しかしやっぱり男前だな幸丸。


 


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あきゅろす。
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