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03
 


 意味深い発言で瀬戸を接客係にしてしまった桜井ちゃんに、クラスメイトは口々に「おぉ…」「すげぇ桜井」「桜井ってあんなんだったの」と言っている。
 しかし桜井ちゃんはそれを気にもとめず、にっこり笑ってまっつんに振り返る。



「決定でいいですか!」
「お、おう…」



 まさかのまっつんまで引き気味である。
 俺の中にあった桜井ちゃんのイメージが、勢いよく崩壊した。











 その日の放課後。



「いやー、こうなるとは思ってたんすよねぇ」



 普段は部活でいない幸丸がそう言いながら苦笑いした。10月に入ると文化祭準備に力を入れる南ヶ丘は、部活が朝練だけで放課後は休みになるらしい。
 そんな幸丸の言葉に首をかしげたのは、俺と多貴と瀬戸、珍しくまだ教室に残る蒼司である。伊織は微笑み。


 教室には疎らにクラスメイトが残っているけど、窓際にはいつもの四人と蒼司に加えて何故か桜井ちゃんがニコニコしながら何故か幸丸の席に座っている。
 その横で机に寄りかかる幸丸は気にしてないっつうか、寧ろ自分から椅子を譲ったんだけど。



「やだなぁ、サチ、私がこの機を逃すわけないでしょ」
「はいはいそーっすね」



 …あれ。あれ?
 何だかとても仲良しな雰囲気が漂っておりますが。

 疑問顔に気付いた幸丸は、苦笑いをそのままに低い位置にある桜井ちゃんの頭に、ぽんと手をのせた。



「こいつ、桜井唯っていって、幼馴染みで彼女っす」



 そう、あっけらかんと言いはなった幸丸に、この場の空気がしん、と静まり返り。
 ……って、


「えぇ!?」
「…は?」
「うっそぉ!」
「へえ」



 俺、瀬戸、多貴、蒼司が同時に声を上げた。
 
 いやいや彼女居るって聞いてたけど、聞いてたけど!



「ぜ、全然幸丸と喋ってんの見たことないけど」
「あぁー…と、…唯が、目立ちたくないからって学校だとラインで会話してんすよ」
「え、目立ちたくないってなんで?」
「いや、まあ、うーん…」



 桜井ちゃんの頭をぐりぐり撫で回しながら唸る幸丸。なにその然り気無さ。
 すると大人しく頭を撫で回されている桜井ちゃんが、ばっと挙手した。



「それはもちろん萌えを観察するためですとも!」
「も、もえ…?」
「Enjoyなlifeを送るための栄養源である趣味を満喫する為にはサチと一緒にいるとそれが難しくなるなぁって思って!まさか二年になってサチがこの輪の中に入るなんてもう滾ってしかたない!ほんとよくやったサチ!しかも不良×無自覚美形とか生で見られるなんてもうほんっとに、眼、福、です!」
「……ごめん幸丸、訳して」
「えー、と…。とにかく俺が仁科たちと仲良くなれて嬉しいっていう感じっす。テンション上がるとこうなんで、慣れるしかないっすね」



 まさに怒濤である。流石幼馴染みというべきか、幸丸に戸惑いはない。さすがの伊織も目を丸くしておる。恐るべし幸丸の彼女、桜井ちゃん。
 とりあえず、彼氏と俺らが仲良くなったことを喜ばしい事だと思ってくれるのは嬉しいけど。


 なんだろう、体育祭での実況鈴木を髣髴とさせるこの雰囲気というかテンションは。



「サチと友達になってくれてありがとう!」
「う、うん…?」



 なんだろう、意味深に聞こえる。というか幸丸の姉さまみたいに見えるんだけど。
 幸丸の交友関係がとてつもなく謎だ。



 幸丸と仲良くなってからたぶん4ヶ月くらいだけど、今日初めて彼女が発覚しました。
 見た目とのギャップになかなか頭がついていきません。
 でも幸丸の彼女であり幼馴染みである桜井ちゃんは、普通に良い子だと思うので、問題ないと思います。はい。
 いかんせん幸丸の周りが濃いけども。
 


 海外の父さんに母さん、楽しそうではあるけど、文化祭が色々不安です。


 


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