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暴走彼女。‐01
 


 体育祭が終わって早くも10月。
 この月の末には、南ヶ丘の大イベントである文化祭が予定されているのだけど、学校全体が───というか、なんかクラス内が浮き足立っている。

 それはなぜか。




「───なーんか、毎年二年生ひとクラスはコスプレ喫茶店だって決まってて、それをぶんどってきたらしいんだよねえ、さすが廣田」



 …らしいです。
 前の席で椅子ごと横に向いた多貴が、感心半分呆れ半分で言った。
 なぜ二年だけなのかは不明だけど、毎年文化祭が近づくと、生徒会と実行委員、加えてなぜか学級委員が合同で文化祭に関する会議を開くらしい。

 それで、二年だけのコスプレ喫茶店枠を学級委員廣田くんがぶんどったと。



「折角いい粒が揃っているんだから、これを利用しないと勿体ない。宝の持ち腐れにはなりたくないし。説き伏せたんだ」



 普段担任であるまっつんが立っている教卓の前にいて、主にこっちを見ながら廣田は笑った。
 ですよねー、瀬戸と蒼司も逃がさないつもりですよね分かります。

 まっつんは黒板の横でパイプ椅子に座って怠そうに眺めてるけど、なんでそんなニヤニヤしてんのか分かりません。不気味。



 午後最後の授業がLHRになり、文化祭で何をやるか考える時間なはずだけど、いや他の学年はそうなんだけど。
 二年だけは会議で決まる。すでに候補は取ってるんだけどね、うちのクラス意味なかったようだ。


 しかも今年から賞与制度が加わったらしく、学年クラス別に良かった模擬店に投票して、一番多かったクラスには最優秀賞で賞品が送られるらしい。
 ちなみに内容はその時までのお楽しみなんだとか。



「まあ、せいぜい全力で愛想を振り撒いてくれ。損はさせないから」



 やばい廣田がイケメンすぎてつらい。
 性格が男前だ。
 二年になってから男前度と辛辣度がまっつんによってレベルが上がったらしい。伸び率が凄いよ。


 クラスメイトを見渡しながら、廣田は眼鏡を上げながらニヤリとする。



「幸いこっちには、デザイナーのタマゴも衣類と裁縫関連会社の生徒もいる。神の思し召しってやつを信じてはいないけど、これはぶんどるしかないと思って」



 委員長の笑顔が恐いです
 完璧主義者だ。


 歓声と拍手が鳴るクラス内は騒がしいけど、楽しそうだね君たち。



「───これで先輩を悩殺出来るよ!」
「コスプレってなんでもいいのかな!?」
「スク水はやめような?」



 男女問わず悩殺とかちょっとよく分からない事を言い合う一部の声を拾ったのか、なぜか際どいモノを禁止例に上げた廣田に笑うしかない。
 それよりも、斜め後ろで幸丸が顔を覆って項垂れているのがとても気になります。
 どうしたんだ幸丸。



「コスプレに関しては、節度ある露出度低めで頼むよ。これは南ヶ丘の名前に傷がつきかねないから」



 盛り上がる中で抜け目なく釘をさした廣田に、揃って「はーい」と良い子な返事を返したクラスメイト。親子か。

 まさか幸丸はコスプレに驚愕したのか。わかるよその気持ち。



「次のLHRから、ファッションデザイン関係と衣類裁縫関係の生徒はグループを作って候補を聞いてほしい。なるべく安価で男女問わず着やすいものがいい」



 一応また同じことを言うが際どいのはやめような、と注意する廣田に返事をしながらも、クラスメイトは何にしようかと既に相談に夢中です。

 デザインと裁縫担当の生徒に判断を任せるのが一番良い、と廣田は苦笑いした。



「やっぱり全員コスプレ?喫茶店だし、裏方も?」
「だろうねえ」



 ちょっとした疑問を投げると、多貴がニヤニヤしながら返してきた。
 なんだそのニヤニヤは。



「瀬戸ちんのコスプレが何になるか楽しみだなぁって」
「……あ、確かに」
「オイ」



 多貴の言葉に頷くと、寝てたと思ってた瀬戸に肩を軽く殴られた。
 騒がしさに起きたらしい。
 相変わらず寝起きは色気垂れ流しだな。


 


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