06
『───続きましては障害物競争です。出場生徒は入場ゲートへ向かってください』
こういう時は普通に喋るんだな、鈴木くん。
なんて考えていると、隣で立ち上がる気配がしてそちらを向いた。
「障害物だっけ」
「……あー」
まったくやる気のない声と面倒そうなしかめ面をした瀬戸は、ため息ひとつ入場ゲートへと向かっていく。
「がんばれよ!」
咄嗟に声を掛ければ、振り返らずに片手を上げただけだったけど、なんとなくそれがむず痒くて。
でも、だがしかし、出場する生徒が集まる入場ゲート付近も、テントで応援する生徒も、なぜか皆驚いたような声でざわついた。
『おーとぉ!?こりゃまた珍しいですね、瀬戸様が体育祭に参加していらした!!どうした一匹狼!!ごちそうさまです!!』
いや、ごちそうさまです、の意味が分からないから。
どんだけ行事参加してねーんだあいつ。
「去年出なかっただけだろ…」
「行事は全部不参加だったみたいだよ」
こぼれた独り言に伊織が返してくれて、とりあえずちょっと納得。
どんだけ協調性ないんだ。
出場生徒たちは瀬戸の存在にビビっていたり見惚れていたりで、なんだか雰囲気がカオス化してる。 だがそんなもんに時間を取るわけもなく、実況席の鈴木君は容赦なく進めていく。
『一匹狼の実力、楽しみです!!、さあ、第一走者は位置についてください』
そして出走の合図が鳴った。
ちなみに瀬戸は第三走者らしい。同じ第三走者の生徒が一部ガチガチなのはなんでだ。
そして早くも第三走者になり、じっと瀬戸を見ていたら、目があった気がした。
とりあえず声は歓声で届かないので口パクで『が、ん、ば、れ』とエールを送ってみた、ら。
「……っ!」
ただ真っ直ぐこっちを見ていたっぽい瀬戸が、ニヤリと、笑った。
『っうぉぉ!?見た、見てしまったイヤらしい狼の笑みを!!ヤバイ!!それはだれに向けたの!?是非ともkwいってぇ!!ごめんってば委員長サマ!!、ごほ…っ、えー、あー、気になるけどとにかく、第三走者の準備が整ったようで、す!!ほかの第三走者しっかりして!!』
そんなハイな鈴木の声も気にならなくなるほどに、今凄く、顔が熱い。
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