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05
 

 なんとなく気になって多貴に聞いてみたら、入学したすぐ後に親衛隊が出来て様付けが定着してしまったとか。
 やめてほしいとは言ったが一部はまだやめてくれなくて、でも鈴木が様付けするのはノリだと思う、と呆れながら言われた。


「前にさー、諒にもあるよとか言ったじゃん?」
「え、親衛隊ってやつ?」
「そー」


 え、でも俺は何も聞いてないんだけど。
 言えば、多貴は何故か懐かしそうに唸り、にこりと笑った。


「オレに言ってきたんだよ。親衛隊じゃなくてファンクラブってことにしといたし、様付けもやめて、普通にしてるなら作ってもいいよーって」
「お前は俺の保護者か」
「家族みたいなもんじゃーん」


 そうだけど。そうだけども。
 何も知らされてない俺のこの複雑さを分かっててその笑顔なんだろ。そうなんだろ…!ニヤニヤしやがって!

 でもなー、直接言われたら言われたで、どうしたらいいか分からないし、俺にそんなファンクラブだとかあることがまず不思議でならない。
 様付けもなし、多貴や伊織たちみたいにあんな風に雄叫びみたいな声もないなら、多貴に任せてよかったんだろう。


「まあ…ありがとう」
「どうせ有耶無耶になっちゃうなら、オレらが決めちゃった方がいいっしょ」
「うん」


 変な視線感じるな、と思ってたけど今までは多貴と伊織へのものだけだと決めつけて気にしてなかったな。
 あれ、俺にもあったのか…。
 なんか知ったら知ったで自意識過剰気味になるから嫌だな。


「ま、今までみたいに気にしないのが一番だよ諒ちん」
「んだな」


 そんなこんなでいつの間にか二人三脚が終盤で、最終走者が縺れながらも走っていた。


『最終走者ゴールです!いい絡みをありがとうございます!いやー、目の保養をありがとう!! 二人三脚総合結果、一位黄、二位赤、三位緑、四位青です。お疲れさまでしたー!』


 ハイテンションな鈴木の実況で、二人三脚に出た生徒がぞろぞろとテントに戻ってくる。


「おつかれ」
「ありがとう」
「ハニィィィ」
「なにさダーリン」


 伊織ってちょいちょい多貴のテンションに乗るよな。
 ちゃんと乗ってる伊織の優しさが、とか、愛が痛い!とか多貴は幸せそうにいつも言ってる。
 お似合い過ぎてこっちまで幸せになるな。
 最初はその甘さに砂吐いてたけど。胸焼けしたけど。


 


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