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03
 


「てか、今日は一人なんすか?」
「いんやー、毎度の如く、店長は2階。今日は朔也先輩が一緒だけど出ちゃってるから」
「へぇ、いつも居るのに居ないっすよねー」
「ねー、神出鬼没もどき」


 大抵来ると、店には時任さんが居るけれど、他の人とはあまり会わない。いや会ってるんだけど、来ると時任さんしか居ないんだよね。
 ここの持ち主で店長さんは、普段二階に引きこもりしているらしい。
 謎だ。

 でも、初対面で、しかも初めて食べさせてくれたケーキは、店長さんの試作品で。


「はー、だけどやっぱりあの初めて食べたケーキは忘れられないっすね」
「ああ、あれねー」


 色々衝撃的だったしな。
 なんてほのぼのしていると、


 - ちりん


 と鈴の音がして、二人して視線を向ける。
 そこには知的でスマートな美男子が。


「…なんだ、珍しい客が来てるな」
「お久しぶりっす!」


 この店の従業員のひとり、皆川さんだった。
 抱えている紙袋は、食材が飛び出ていて大きい。ビニールじゃない所がまた良いアクセントみたいだ。

 時任さんはその紙袋に驚いていて。


「荷物すごいですね」
「ただいま、睦月」
「…おかえりなさい」


 そんな時任さんの問いかけには笑顔でスルーしたけど。
 なんつーか、すごく、


「時任さんに対する態度って、みなさんめちゃくちゃ甘いっすよねー」


 うん。ほわほわしているというか、とにかく甘いのだ。
 皆川さんに限らず他の人もそうだけど。
 アイスティーを飲みながら言うと、皆川さんは当然のように言い放つ。


「それは、好きだからな」
「俺も好きですよ、時任さんのこと!」
「………え、」
「……」


 直後にびしっと固まる二人。え、なに変なこと言ったかな。

 でも、嘘じゃないし。


「ケーキ美味いし、優しいし楽しいし!」
「………、…あぁ、そうだな」


 ぐっと拳を作りながら言うと、なぜか皆川さんと時任さんは目を見開いていて。しばらくの間があった後、皆川さんは戸惑ったように納得した。




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