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秋の味覚もスイーツで。‐01
 

 アンティークな雰囲気を漂わせた、ひっそりと存在する喫茶店。
 扉に、ゴシック体で『R』とだけあるその店は俺のお気に入りだ。ふわりと漂う甘い香りに鼻を刺激されていつぞやの初来店を思い出す。




 - ちりん


 扉を開ければ、小さく控えめな鈴の音が来店を知らせる。


「…っいらっしゃいませー」


 一瞬驚いたように詰まらせて、来店を歓迎する声に少し笑う。
 俺を見るなり、この喫茶店の従業員であり恐ろしいほど来る度にいつも居る、時任睦月さんが、きょとりと目を瞬かせた。


「…あんれ、」
「……お久しぶりです、来ちゃいました」


 9月になって少し、俺はまたこの店から漂う香りに誘われてしまった。



「近くを通ったら、甘い匂いに誘われて…」
「……やっぱり」


 そんな返しに、あはは、なんて笑って。
 ああ、時任さんの穏やかな微笑みに癒されるー。


「しばらくぶり。夏休み楽しんでた?」
「まあまあっすよ、テストも容赦ないっすから」
「へえー、テストとか懐かしい」


 促されるままカウンターに腰掛けながら苦笑いすると、時任さんは懐かしそうに目を細めた。
 テストも夏休みも今思うとあっという間だけど、色々あったし。

 あれ、でも時任さんって俺とあんま歳変わらないように見えるけど。


「懐かしいとか、そんな歳じゃないでしょ、時任さんって」
「いやいや、俺、中学途中から行ってないから」
「うそ、まじで。意外っすね」
「えぇ、なにそれ、意外とか」


 大学生くらいな印象だけど高校は卒業してると思ってた。
 それが中卒で、しかも途中から不登校。意外だ。そんなことを思いつつ、この喫茶店でいつも頼む飲み物をお願いする。


「とりあえず、アイスティーストレートでお願いしますっ」
「はーい」


 慣れたように紅茶を準備する時任さんは、笑みをそのままに口を開く。


「今日は暇だったから、モンブラン作ったのさ」
「モンブランっすか!俺、大好き」
「甘いもんなら殆ど全部じゃん」
「あはは、確かに」


 いやでもここのケーキは別格!モンブランやったー。9月だからかな。


 

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