[携帯モード] [URL送信]
07
 

「ちが、違くて。伊織は早織さんを大切におもっています。俺も、多貴も。それを枷だって…」
「諒君はいつも優しいわね。なっちゃんが可愛い弟だって自慢するのも分かるわ」
「…へ?」


 目があった早織さんは嬉しそうに笑っていて、一瞬、なっちゃんって誰だと思ってしまった。


「夏樹ちゃんのご両親、間宮の家は医者だと聞いているでしょう?」


 不意に出た夏樹さんの名前に少し混乱するも、間宮という姓と医者という言葉に落ち着きを取り戻す。

 夏樹さんの両親は医者で、というか夏樹さんの父親が院長で母親が内科医と看護師を兼任している凄い人だ。
 多忙で会うことは滅多にないけど。


「夏樹ちゃんのお母さんは昔から私の担当医をしてくれていて、夏樹ちゃんが小さい頃からよくお話をしていたの」


 そこで初めて、夏樹さんがなぜ早織さんを説得出来たのか分かった気がした。
 初めて会った時から早織さんは俺を気に入ってくれていたみたいだったし、不思議で仕方なかったけど。
 夏樹さんと仲が良いとか凄い、というか夏樹さんが凄い。なんか恐い。


「…二人とも今はまだ子供で周りの事をよく見られないけれど、大人である私たちは見ることが出来るから、少しでもいいから見てやってほしいって、夏樹ちゃんに言われたの」
「……」
「頑張ってるあの子をちゃんと見て、もう一度だけでいいから考えてみてほしいって真剣な顔でね」


 見ているだけだった夏樹さんは、自分の力で限界も越えてやってみてから愚痴れと多貴に怒ったことがあった。

 諦めかけていた多貴が夏樹さんに、頑張っても無理なんだと嘆いた時で。
 その程度の頑張りで諦めるような気持ちなら、お前に伊織を愛する資格なんかない、と冷たく言い放った夏樹さんは、キレる多貴をしばらく無視していた。


 それから多貴が思い直したように、悩むより努力をしようと動いてしばらく経ってから、少しずつ、最初は俺が伊織と会うことを許されて、連絡を取ったり学校へも行けるようになった。

 夏樹さんが何かをした事は知っていたけれど、まさか直接早織さんに言いに行くとは思ってなかった…。

 


[*][#]

23/26ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!