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02
 

 口に含めばしっとりと溶けるような食感に、甘過ぎない柔らかな味が口一杯広がっていく。
 飲み込むのが勿体ないくらい美味しい。やばい。癒される。


「いつ見ても美味しそうに食べるねえ」
「んぐ、…美味しいですから!」


 微笑みながらそう言った時任さんに、素直に意気込めば声を出して笑われたけど、嫌みなものじゃないその声はとても居心地が良い。
 ゆっくり味わって三つ目を手にした時、喫茶店の扉が開く鈴の音が聞こえた。


「あ、お帰りなさい」
「ただいま、睦月」


 入ってきたのは客ではなくて、時任さんの声に滑らかに返事をしたのは喫茶店の店員の一人である、日向さんだった。
 時任さんに対してとてつもない甘さで接しているけれど、この喫茶店の店員さんは漏れ無く全員が時任さんに甘いと思う。
 なんていうか、雰囲気が。


「こんにちはー」
「こんにちは、久し振りだね」


 にこりと笑みを返してくれた日向さんは、まるでどっかの漫画に出てくるような爽やかで優しげな雰囲気を持った素晴らしくイケメンな大学生だ。
 不思議なことにこの喫茶店の店員さんは皆、驚くほど容姿が整ってる。
 自分の身近な周りも顔面偏差値が高いけど、そこに大人の色気をプラスしたらとんでもない事になるらしい。
 強面な美形もいるけど、その人はどっか不良という危なげな雰囲気があって。
 知的な美形に、爽やかな美形、危なげな美形。そこに更にレベルの高い気怠げな美形である店長さんがいる。
 そしてその中で一人、美形に囲まれてるせいか何なのかぱっと見普通で、でも大きな目に柔らかな雰囲気を持つ時任さんは、なんだか美形だらけの緊張感がある此処に癒しを加えているような。


 気紛れな感じで猫みたいで、ここにいることに違和感がない。むしろ居る事でプラスになるすごい人なのだと、最近知った。


「今日はカップケーキなんだね」


 買い出しに行っていたらしい日向さんが、荷物を整理しながら微笑んだ。
 ケーキを頬張りながら頷けばまるで兄のように優しい笑顔をくれる。
 ああ、もう、なんだこの人大天使様か。


 


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あきゅろす。
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