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糖分補給‐01



「へぇー、もう夏休みになるんだ」


 葉から煮出して冷ました紅茶を注ぎながら、カウンター越しの柔らかい雰囲気を持つ人が懐かしそうに言った。
 からりとグラスに当たる氷。


「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」


 綺麗なグラスに綺麗な色の紅茶が置かれ、礼を述べて口をつける。
 ほのかな渋味と甘味が好きで、いつもストレートで頼んでるけど、やっぱりここの紅茶は美味しい。

 夏休み数日前、テストもゴタゴタも片付いて訪れたのはお気に入りの喫茶店『R』で、たまに行くと必ず居るのが目の前の店員さん。時任睦月さん。

 ふわふわしてそうな茶髪に男にしては大きい目。柔らかい雰囲気に気さくな性格で、初めて来た時から良くしてもらってる。

 この店の人が造るケーキはそりゃあもう見た目から味から大好きで、試作品だったり暇潰しだったりで造ったものをいつもタダで食べさせてくれるまさに天国。特別優遇万歳。


「今日はー、ちょっとシンプルにカップケーキを造ってみましたー」
「マジですか!」


 じゃーん、と効果音を口にする時任さんはそんなお茶目な所もあったりして。
 白い四角い皿に盛られた、幾つかの小さなカップケーキに心が踊る。

 カラフルなカップケーキが五個。プレーン、抹茶、チョコ、イチゴと定番のフレーバーを説明してくれて、ひとつひとつに目が行く。それを見ていたのか、くすりと笑う気配がした。
 ちょっと恥ずかしいが欲には勝てない。


「んで、これは夏なのでレモンとオレンジのミックス」


 そう言って指されたカップケーキは、鮮やかなオレンジで、上にスライスされたレモンが埋まっていた。
 見るからに爽やかで旨そうなそれに、自覚するほど目が輝く。


「すごい、かわいーけど綺麗」
「まじで?ありがとー」


 ひとつひとつに飾りがあって、プレーンはホイップクリームで、抹茶は小豆、チョコはホワイトチョコのソース、イチゴはスライスした苺。
 専門店でありそうな、二口くらいで食べられるような小さいケーキ。だけど此処でしか味わえない特別なもの。
 じっくり眺めるのはもう癖で、四方八方眺めてから、プレーンを手に取るとふんわりと柔らかくしっかりした感触にほほが緩んだ。


 

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あきゅろす。
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