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いくら仕事が出来ても家柄が良くても美形でもその想いが強くても、相手に伝わらなきゃなんの価値も意味もなくなる。
相手に伝わって初めて自分の努力に価値が生まれるし、価値を与えてくれる。
全力で相手にぶつかってくる蒼司は俺にだって勿体ない。その価値をちゃんと見出す事は出来なかったから。
もっと応えられていいと思う。もっと与えられるべきだと思う。蒼司が与えてくるその全てじゃなくても、同等の価値を持った想いを蒼司は受けとるべきだと思うから。
会長には、それが出来る気がするから。
────でも。
「会長が今のまま変わらず蒼司に接するなら、何も言わないで自己満足に必死だって言うなら、俺は蒼司を背中に隠しますよ」
「諒…?」
好きの意味が違っても、俺は蒼司に幸せになってほしいし。
「会長みたいに蒼司の意思を無視するような事はしないけど、蒼司が嫌がるなら、望まないなら、出来る限りで遠ざけます」
「……蒼司、お前はどうしたい」
人の話聞けやゴルァ。
「会長は、俺の事、」
「……俺はお前が好きだ。こいつの言った事に否定はしない」
「……」
なんか、冷たいなあ。
声は柔らかいのに、なんだか冷たい。
「俺は…っ、」
「ただ、お前が俺をどう思おうと、お前は俺のもんだ」
「……っ」
「……あぁ…もう…」
…ッあああああ!馬鹿!やっぱり馬鹿なのか!ふざけんじゃねぇコラァ!バ会長!アホ!間抜け!
「…かーいーちょー、だからそういうこと言ってんじゃねぇって言って」
‐バァンッ!
「!」
「!?」
「!!」
「ひゃ…ッ!」
んだろーがこの野郎!、と叫び出しかけた時、声をかき消すように響いた音で全員がその出所を見た。
会計は小さく叫んで副会長にしがみついたけど。
隣を見たら、テーブルに両手をついて立ち上がっている状態の蒼司がいて。俯いていて表情は分からないが、纏う空気が素晴らしくどす黒いのは錯覚か…?
山積みだった菓子は衝撃で幾つか落下して、ティーカップから若干溢れた紅茶がテーブルを濡らしていた。
ちょ、どんだけ強く叩き付けたのお前…。
思いながらも蒼司を見ていたら、本人はゆらりと顔を上げた。
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