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07
 

 落ち着いてたはずの波のうねりが大きくなっていく。
 これは苛立ちの波。あまり抱くことがない、明らかな苛立ち。


「会長は俺が邪魔なんですよね?蒼司の目が俺に向いているのが気に食わないから、わざわざ他人使ってアンタに対する気持ちを良いように利用して巻き込んで、俺が蒼司に近付かないようにして、その目を自分に向けようとしたんですよね」


 会長が蒼司を好きだと言ったわけじゃない。俺に直接何かを言ってもない。言ったのは彼(女)らであって、行動したのは彼(女)らであって。
 会長が望んでいるから。会長が好きだからっつー純粋な気持ちを知っていて、例えそうじゃないヤツが居たとしても、そいつらの気持ちを利用した。


「馨、本当…?」


 副会長が低い声で会長に言っても、会長は俺から目を離さない。俺も反らさない。
 俺に向ける敵意を含んだその目が確証になる。


「蒼司を見て何となく予想した。アンタは自分でぶつかりもしないで、何も言わないで勝手な判断で行動したんですよね」


 蒼司は知らない。予想はしてたかもしれない。でも確証はない。会長が蒼司を恋愛感情で好きだという確証なんて、本人がそれを伝えなきゃ得られない。


「……お前に、何が分かる」


 地響きのような低く唸る声。怒りを含んで、射殺すように鋭い目。
 だけどそれさえも、今の俺には何の効果もない。ただ苛立ちが増すだけだ。


「分かるわけねぇだろ会長馬鹿なの?」


 ピクッと眉を潜めた会長に、プライド高いんだなと思う。
 そのプライドが、意地が、俺には理解できない。


「あのさ、アンタが蒼司を好こうが勝手だよ。俺には関係ない。 でもその想いと嫉妬を正当化して俺にぶつけないでくれません?ぶつける相手間違えんなよ。…関係ないヤツ巻き込んで、物を大切にしないで他人使って自分は高みの見物?いいご身分っすね」
「…お前、」



 あー、イライラする。


「最低だよアンタ」


 目を見開いたのは、会長だけだろうか。静かな空間で俺の声だけが乱入を許さないように吐き出されて。


 会長の苛立ちは、気持ちの肯定だけど。
 言葉なくして伝わると思うなよ。





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