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06
 

「───それで?俺に何の用だ、仁科諒。言いたいことがある顔だな」


 前置きいらずですね流石です。やっぱり俺様何様ってやつですね流石です。
 副会長が置いた珈琲を一口飲んで、会長はデスクに肘をつき手を組んだ。そんな姿も様になるなんて、美形って末恐ろしい生き物だ。

 じゃ、遠慮なく。


「二週間くらい前からある俺(の机)に対する嫌がらせと噂、その周囲を巻き込んだ件、会長関係してますよね?」
「何の話だ?」


 ま、そうくるよね。
 副会長、会計、蒼司、三人は驚いたように目を見開いている。蒼司には机の嫌がらせの件と噂しか教えてない。
 周囲を巻き込んだ、俺が孤立化した経緯は話したけど理由は話してないし。経緯は噂話だし、様子見だし。


「さっき会長の親衛隊だかいう四人に呼び出されまして、元恋人の話とか会長に聞いたってポロっと言ってました」
「だから?」


 余裕綽々ですな。眉ひとつ動かさないなんて静止画ですかこえーよ。


「……『蒼司』」
「え?」


 あ、ごめん呼んだわけじゃないんだ。
 横からの声に目を向けて苦笑すると、蒼司は首をかしげる。
 会長に目を戻すと、眉間にシワ。お前もか!
 てか蒼司の名前に反応する辺り、気安く呼ぶなってか。どんな嫉妬。


「蒼司に元恋人がいて、まだ蒼司が好きだと思ってるから、俺に接触したんですよね」
「……」


 むごーん。まあいいか。肯定だ肯定。


「その後から、始まりましたよ。タイミング良いですよね、今までなんっにもなかったのに」
「そうだな」


 それで?みたいな顔。
 ああ、なんだろうこの気持ち。


「……アンタそれでも蒼司に好きだと胸張って言えんの?」


 説明ぶっ飛ばしてつい口から出た言葉に、俺自身びっくりしたけど。
 それよりもびっくりしていたのは横にいる三人で。会長は相変わらず眉間にシワ。さっきより深いけど。


「俺はアンタの気持ちなんか知らないし知りたくないけど、蒼司に対する態度とか声とか雰囲気は分かります」


 照れなくなるほど向けられた事があっても、それは忘れることが出来ない。
 暖かく、優しく、愛しいと溢れでたそれを、身をもって感じていたんだから。



 


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あきゅろす。
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