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03
 

 見た目とは裏腹に滑らかに動いた扉。ひと一人が余裕で入れるくらいに開いたその瞬間、ばっと黒い物体が視界に入った、刹那。


「そーちゃーんッ!」
「ぐふ…っ」
「ぉわ…!?」


 がばぁっと泣きつき女子よろしく突進してきた人物に、蒼司がよろめいた。斜め後ろにいた俺は驚きのあまり小さく声が出た。
 ふわふわのミルクティーみたいな色した髪に、甘い香り。蒼司の胸くらいまでしかない小さな体。
 背中に回った手はぎゅうぎゅうと蒼司に絡めて。
 呻いたものの突進された本人は慣れたように頭を撫でている。


 ……なんだこれは。


「どこいってたのー、寂しかった!」
「いや授業ですから」


 あれ、そういやそうだ。体育の授業前の休み時間に呼び出し食らったんだっけ。
 うん、次もサボりになっちゃったな。
 授業忘れるとか学生としてどうなのって思うよ我ながら。

 と、生徒会室内から、蒼司とは違った柔らかな声が聞こえてきた。


「こんにちは霧島君、キミから来てくれるなんて嬉しいな」


 にっこり、と笑みを浮かべるその人物は紅茶が似合いそうな紳士的雰囲気で。
 ああ、この人が副会長か。と人伝のイメージを思い出す。

 そんな副会長と、ばっちり目があった。
 怪訝さを隠すことなく目を細めた副会長に、なんだか寒気がしました。


「……きみは?」
「あ、俺は、」
「相模先輩。彼は俺の元恋人です」


 ふわふわを撫でながら蒼司がきっぱり言い切った。
 いやいやいやお前見ろよ副会長の顔!笑顔が固まってるから!恐いから!


「蒼ちゃんの、元カレぇ?」


 顔をあげた小柄な人と目が合う。
 くりくりの大きな二重瞼の目が、興味深そうに瞬く。
 そういや蒼司、可愛いのに弱いよな。


「こ、んにちは。え、と」
「会長に用があるんですけど」


 うおーい。
 言い淀む俺に、次々と蒼司がぶっちゃけてしまいました。にっこり笑顔で。
 なにこれコワイ。


「……そう、君が仁科君?」
「あ、はい…ドウモ」


 笑顔こわいデス!




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あきゅろす。
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