被害者(?)は誰?‐01 並んで歩き、校舎に入る。確か生徒会室は四階にあったと思う。どの棟だかは知らんけど。 体育館用の運動靴を持ったまま、蒼司はポケットを探り携帯を取り出した。 「ちょっと電話するね」 「おう」 カコカコと携帯を弄り、耳に当てるのを見る。真横にいると微かに呼び出し音が聞こえてくるような。 会長かなあ、なんて適当にあたりをつけて、仲良いんだな、となんだか微笑ましくなる。 でもいかんせん蒼司の顔がしかめ面なのが気になるけども。 「…もしもし、会長?」 いつもより、いくらか声が低くてちょっとびっくり。 思わず隣を見ると、さっきよりしかめ面になってた。なんでだよ。 だがしかし次の瞬間に俺は更にびっくりすることになった。 「今生徒会室にいま…は?だから呼ばねぇよしつけぇな」 「……」 …え?蒼司ですよね? お前そんなしゃべり方だっけ?あれ、こっちが素なの? 猫被りってやつですか?今まで?うそん。 驚愕も驚愕で、開いた口が塞がらないとはこのことか。 「……うるさいな、どこでもいいでしょ。何であんたに制限されなきゃならないんだよふざけんな」 あれー? 仲良いとか思ってた今までの自分よ、突っ込ませてくれ。 いや、仲良い、のか? こんな蒼司見たことないし、なんだかんだ一緒にいるっぽいし…。 「はぁ?知るかバ会長。どうでもいいから今から行きますんでそれじゃあ」 早口で喋り、それじゃあって言った途端に通話を終わらせた蒼司。 うん、一方的に切ったよね。 屋上の時もこんな感じだったのか。それだったらなんか会長が惨めだぞ。 「ごめんね、諒」 「ぅえ?」 携帯をしまいこみながら言った蒼司の声は、今までの聞きなれたもので。声が上擦った。 困ったような、よく分からない表情をしてるけどなんだどうした。 蒼司は苦笑するだけで、でもその表情に見覚えがあって。こいつのコレは会長が理由か、となんとなく思った。 転校してきて短期間で何があったんだこいつは。 [*][#] [戻る] |