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困惑。‐01
 


 言い返すことが出来ずに口を閉ざす瀬戸に蒼司はなにも言わず、深く息を吐き出してテラスから出ていった。

 さざ波の音が聞こえても、暗闇でなにも見えない。
 海側へ向き佇んだまま、瀬戸は深く眉間に皺を造る。


「……どうしろっつんだよ」


 複雑な怒りを含む目力に反し、その吐き出された声は弱々しく消えていった。

























 ───部屋に戻ると豆電球が点いていて、室内がぼんやりオレンジ色に染まってた。
 幸丸は熟睡中みたいで、布団が半分飛んでて少し笑う。伊織と多貴は別々のベッドで一緒には寝ていなかったけど向き合ってはいた。

 しんとした部屋で、ずっ、と鼻を啜ってちょっと焦った。
 起きたかな……。

 ぴくりともしない三人に安心して、ソファに座った時だった。


「、諒」


 かすかな伊織の声ではっと顔を上げると、半身を起き上がらせた伊織がいて。


「…ごめん、起こした?」
「そんな寝入ってないよ、気にしないで」
「ん…」


 上手く笑えなくて口端が若干引き吊ったりしたけど、薄暗くて見えてないと思いたい。
 一息分の沈黙が嫌に長く感じた。


「…耐えられなくなったら我慢しないで吐き出してね」


 ぱっと顔を上げると伊織の微笑みが見えて。
 それから伊織は「ちゃんと寝なよ、おやすみ」と言ってまた布団に潜った。


「…ありがと」


 呟いて、ふたたび静かになった部屋。
 ぐるぐる回るさっきの記憶と言葉が、消えたり点いたりする電気みたいでイライラした。


 しばらくソファで膝を抱えていたとき、カチャン、とドアの開く音がして心臓がはね上がった。


 …瀬戸だ。どうしよう。
 どうしよう…!




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