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蒼司と瀬戸。‐01
 



 仁科諒が立ち去った後、薄暗い廊下には殺気立つ不良と正反対の真面目そうな生徒の二人だけが残った。

 霧島蒼司はさっきまでとはまるで違う空気を纏い、しかしその表情に変化はない。
 瀬戸和史は誰が見ても不機嫌に殺気を纏い、まるで威嚇するトラである。


 互いに目を合わせたまま、時間だけが過ぎる。
 22時の消灯時間までは然ほど残ってないのは、お互い頭に入ってはいるものの焦ることはなく。


 その沈黙は、蒼司が破ることになった。


「ちょっと、表に出ようか」
「……」


 ね、と促す蒼司に対し、瀬戸は不機嫌な顔ではあるが文句はないようで足を動かした。





 外に出ると、潮風が鼻をつく。
 中庭ではあったが、そこからは海を見ることが出来る場所にあるもののしかし夜のためまったくの暗闇である。
 いくつかのライトのお陰で中庭の姿は確認出来るくらいで、二人は海寄りの小さいテラスまで黙って歩いた。


「瀬戸君は、諒と一緒にいた?」
「……途中から」
「途中?」
「女子にコクられてたんだと」
「ああ…」


 テラスからはなにも景色は見えなかったが、蒼司は構うことなくその暗闇に目を向けていた。
 別のなにかを見ているように、その目はただまっすぐだった。


 怪訝そうな顔をする瀬戸を一瞥してから、蒼司は小さく息を吐く。


「これは勘なんだけどさ、」


 それは確かめるような声で。


「君は諒のこと、好き?」


 直球な質問だった。
 予想していなかったのか、瀬戸はさっきまでとは違い目を見開きさ迷わせ、言葉を詰まらせる。

 蒼司は瀬戸を見ていた。
 体ごと向き合って質問の答えをただ待っている。


 瀬戸は目を閉じ、静かに深呼吸をして、真っ直ぐに蒼司を見返す。


「だったらなんだ」


 


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あきゅろす。
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