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中編
05
 


 なぜ宮田君は小山くんを気に入らないと思ったのかが気になる。
 人懐っこい彼は基本的に誰に対しても態度は変わらない。抱きついてくるのは俺と翔君にだけなのだが、それを除けば別け隔てない大変可愛がられる後輩なのだ。
 小山くんにも今までそんな素振りなど塵のひとつも見えなかった。なのに今日は、表情はいつもと同じだが言葉がはっきりと拒絶を表した。


 気に入らないから喋りまくっていた、と言うけれどよくもまあそこまで話題を引っ張り出せたもんだなと感心する一方で、気に入らない相手に対しての言動に迷いがないという明快さに驚く。
 小山くんが翔君を気に入り出してから宮田君は小山くんとそんなシフト被ってないし、翔君を見つめる小山くんに気付いたのはついさっきだったはずなのに何という鋭さと迅速さ。



「気に入らないってなにが」



 宮田君を見上げる翔君は無表情でそう言うと、彼は「んー」と喉を鳴らしてから目を細めた。



「由貴さんと翔さんの間に割り込んできそうだったからですね」



 一切の迷いがない言葉に、この子の勘こわい、と思った。
 鈍感そうに見えてかなり鋭い。
 俺ですらおっちゃんの話を聞き小山くんと会話をして確信したというのに、一瞬の自分の勘だけで気付くなんて。

 恋愛感情で翔君を好きになっているかどうかは分からない、と言えば、宮田君は子供っぽい笑みを見せた。



「なりますよ。由貴さんと翔さんが恋人なのは知らないから、二人が仲良かろうが迷わず突っ込んで来ます」
「いやいや、なんでそんなはっきりと」
「勘です」



 俺の勘って、よくも悪くも高確率で当たるんです。と言い切った宮田君は、「だから俺の勝手で邪魔します」と満面に眩しい笑みを作った。
 それを見ていた翔君は、無表情のまま何故か宮田君の肩に手を置いて頷いて言った。



「じゃあよろしく」
「はい!」
「えええええ」



 ちょ、なにこの二人手を組んだぞ。

 俺と翔君の間に割り込まないようにするという個人的には大変ありがたい策ではあるけれど、まさか翔君がそれを進んで頼むとは思わなかった。

 あからさまにはしない、と言って宮田君は笑っているが、そこまで協力的なのも不思議ではある。
 そんな小山くんが気に入らないのか。人懐っこ過ぎるくらいな宮田君にしてはかなり珍しい。


 俺が休みだったり翔君と宮田君が一緒に居る時は、たぶん二人はあまり離れない気がする。
 普段から宮田君はくっついているから違和感ないだろうけど、小山くんに対して随分大袈裟だなぁと思わなくもない。



「とりあえず様子見、な」
「はーい」
「うん」



 苦笑いになってしまったが、二人はイイコみたいに手をあげて返事をしてくれたのでまあ良いか。
 まったく癒し系は揃うと最強である。



 それから3時の上がりまで、三人で戯れながら仕事をして、お疲れ様と手を振る無表情と満面の笑みという正反対の二人に手を振り返して帰った。


 


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